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Ezra ReguerraライターRobert Lakin監修編集者

英国が「7兆円」を掘り当てる? 国債もブロックチェーン化、金融大国の座を狙う国家プロジェクト

最新ニュース公開日2026年7月14日

英国政府が、株式や国債などをブロックチェーン上で取引する「トークン化金融」に本腰を入れる。2035年までに年間最大7兆1000億円の経済効果を生み出す可能性があるとして、2027年初頭には英国初の「デジタル国債」を発行する計画だ。ブラックロックやJPモルガン、コインベースなど50社超が集結し、金融市場の“総デジタル化”を目指す。

英国が、ブロックチェーンで年間7兆円を稼ぐ――。

にわかには信じがたい数字だが、これは暗号資産企業がぶち上げた景気のいい宣伝文句ではない。英国政府の支援を受けた業界タスクフォースが公表した試算である。

英国が金融資産の「トークン化」で世界をリードすれば、2035年までに年間の経済生産額を最大330億ポンド、約7兆1000億円(440億ドル)押し上げられる可能性があるという。

試算は、英国財務省から「ホールセール・デジタル市場チャンピオン」に任命されたクリス・ウーラード氏の初報告書に盛り込まれた

ウーラード氏に与えられた仕事は、英国政府が掲げるデジタル市場戦略を、絵に描いた餅で終わらせないことだ。

株や国債をブロックチェーンで取引

そもそも「トークン化」とは何なのか。

簡単に言えば、国債や株式、ファンドなどの金融資産を、ブロックチェーン上で扱えるデジタルデータに変える仕組みである。

現在の金融取引では、売買が成立してから実際に資産や資金を受け渡すまでに、複数の金融機関や決済システムを経由する。そのため時間も手数料もかかる。

これをブロックチェーン上で処理すれば、取引から決済までを短時間で完了できる可能性がある。さらに、保有する国債などを担保として差し出し、即座に現金を借りるといった使い方も想定されている。

今回の報告書では、証券を担保に資金を借りる金融取引にブロックチェーンを導入し、今後12カ月間で実証する計画が示された。

そして、もう一つの目玉が「デジタル国債」だ。

英国政府に対し、2027年第1四半期までに、同国初となるトークン化された国債を発行するよう求めている。

ブラックロック、JPモルガンも集結

この国家プロジェクトに参加している顔ぶれは、実に物々しい。

業界タスクフォースには、伝統的な金融機関と暗号資産企業を合わせて50社以上が参加している。

ブラックロック、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレー、HSBC、UBSに加え、コインベース、サークル、リップル、クラーケン、DTCC、ユーロクリアなどが名を連ねた。

いわば、ウォール街と暗号資産業界の“大連合”である。

英国が目指しているのは、ブロックチェーンの実験を小規模な試験運用で終わらせることではない。

トークン化した証券を実際の市場で売買し、決済し、さらには借り入れの担保として使えるところまで持っていく。

報告書は、今後の課題について「試験運用から大規模展開へ」「野心から行動へ」と表現した。

要するに、「ブロックチェーンは便利そうですね」と会議室で話し合う段階は終わった。次は、本物のカネを動かす番だというわけだ。

リップル「もはや実験ではない」

タスクフォースに参加するリップルも、今回の計画を支持している。

同社は、ブロックチェーン上で運用されるファンドや債券、レポ取引について、「もはや実験ではない」と強調。従来型の金融商品よりも、すでに「安く、優れ、速い」ことが証明されつつあると主張した

レポ取引とは、国債などの証券を一時的に売却し、後日買い戻す条件で資金を調達する取引だ。

金融機関にとっては日常的な資金調達手段だが、現在は複数の仲介機関やシステムを介して行われている。これをブロックチェーンで自動化できれば、コストや決済リスクを大幅に減らせる可能性がある。

英国初の「デジタル国債」

もっとも、デジタル国債そのものは、今回突然浮上した構想ではない。

英国は2024年11月、「デジタル・ギルト・インストゥルメント」と呼ばれる実証事業を発表していた

ギルトとは、英国政府が発行する国債の通称である。

さらに2025年7月には、ブロックチェーン上での決済や店頭取引、流通市場の整備を進める計画を公表。2026年2月12日には、HSBCのデジタル資産プラットフォーム「オリオン」を実証事業の支援基盤として採用した。

今回の報告書では、そこに具体的な期限が加わった。

最初のデジタル国債を発行するだけではない。第2弾、第3弾の発行を続け、流通市場で実際に売買できるようにする。最終的には、中央銀行から資金を借りる際の担保として使えるようにすることまで求めている。

「発行しただけ」では意味がない

報告書は、トークン化した証券について、発行しただけではほとんど意味がないと指摘している。

市場で自由に売買できず、資金調達の担保としても使えないのであれば、ブロックチェーン上に置き換える価値は限られるからだ。

そこでタスクフォースは、イングランド銀行に対し、デジタル国債を担保として受け入れるよう求めた。

これが実現すれば、金融機関はトークン化された英国債を使い、中央銀行から資金を調達できるようになる。

デジタル国債は単なる“ハイテクな国債”ではなく、英国金融市場の基盤そのものに組み込まれることになる。

決済インフラはすでに稼働

英国には、こうした市場を支えるブロックチェーン型の決済インフラも存在する。

ロンドンに拠点を置くフィナリティは2023年12月、英ポンド建てのホールセール決済システムを立ち上げた。

このシステムは中央銀行に預けられた準備金と連動しており、リアルタイムのレポ取引や、トークン化証券の決済、異なる通貨間の支払いを支えるよう設計されている。

つまり英国は、計画だけを語っているわけではない。

国債をデジタル化する構想があり、取引を決済するための仕組みもある。さらに、世界最大級の金融機関と暗号資産企業がそろっている。

あとは、本当に市場を動かせるかどうかだ。

金融大国ロンドンの地位を守るため、英国政府が仕掛けた「年間7兆円」の大勝負。その成否は、2027年初頭に予定されるデジタル国債の発行で、最初の審判を迎えることになりそうだ。

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