
THORChain、10ネットワークでスワップ停止 バイナンス攻撃資金の移動にも影響
ロスチェーン取引プロトコルのTHORChainは、イーサリアムのブロック再編成で返金処理のバグが発覚したことを受け、10のネットワークでスワップを停止した。チェイナリシスによると、この緊急停止はバイナンスへの攻撃で盗まれた資金の移動も遅らせた可能性がある。

クロスチェーン取引プロトコルのTHORChainは土曜日、イーサリアムのブロック再編成によって返金処理のバグが発覚したことを受け、複数のブロックチェーンでスワップを停止した。ブロックチェーン分析企業チェイナリシスによると、この障害によって、バイナンスから盗まれた資金の移動が意図せず遅れた可能性がある。
THORChainによると、問題は土曜日のUTC(世界協定時)11時34分に発生した。イーサリアムで1ブロック分の再編成が起こり、THORChainがすでに入金として計上していた10 ETH(イーサ)の入金記録が取り消された。
その後、スワップが設定された価格制限を満たさなかったため、THORChainは実際にはボールトに入っていない資金に対して返金を実行した。さらに、送金者が実際に入金していた資金も返金されたことで、10 ETHが余分に支払われ、自動停止が発動した。
イーサリアムのブロック再編成(リオーグ)とは、ネットワークが直近のブロックを、別の競合するブロックに置き換える現象だ。今回見つかった脆弱性では、イーサリアム上で成立したと認識されなくなった送金に対しても、THORChainが返金できてしまう。悪意ある攻撃者が、この不整合を悪用する可能性がある。
THORChainの開発チームは、「この問題が公になった以上、外部チェーンでブロック再編成が起きるたびに、悪意ある攻撃者が同じノンスを使った新たなトランザクションを実行し、THORChainのボールトから資金を受け取れる可能性がある」と説明した。
プロトコルのネットワーク稼働状況によると、ノード運営者はビットコイン、イーサリアム、ソラナ、トロンなど10のネットワークで、関連資産のスワップを停止した。一方、アバランチ、ベース、XRPに関する取引は継続した。
THORChainは「各チェーンが安全だと判断されれば、ノード運営者が順次再開を決定する」としている。
緊急停止でバイナンス攻撃資金の洗浄も遅れる
今回の取引停止は、北朝鮮のハッカーが先週のバイナンスへの63億ドル(約9,954億円)の攻撃で盗んだ資金を洗浄しようとする動きにも影響したという。
チェイナリシスは日曜日、「THORChainは意図せず、バイナンスから盗まれた多額の資金の洗浄を遅らせた」と指摘した。今回の緊急停止により、「北朝鮮の資金洗浄担当者を含むすべてのユーザーが、クロスチェーンスワップを利用できなくなっている」と説明した。
チェイナリシスはさらに、「サービスが復旧するまで、ハッカーを含む誰もが、THORChainの大半のブリッジを通じてスワップできない」と述べた。
今回の障害は、米当局が暗号資産インフラ事業者に対し、盗まれた資金の移動を制限するよう圧力を強めるなかで発生した。
米連邦捜査局(FBI)は土曜日、THORChainのノード運営者やDeFiサービス、その他の暗号資産関連事業者に対し、バイナンスへの攻撃で盗まれた資金の洗浄に使われた「トレーダートレイター」関連アドレスからの取引を遮断するよう要請した。
北朝鮮のハッカーは過去の攻撃でも、許可なく利用できるTHORChainを通じて暗号資産を交換してきた。
一方、THORChainは、盗まれた資金がプロトコルを経由していることへの批判が高まるなかでも、中立性とパーミッションレスなインフラとしての立場を維持している。
プロジェクトは第3四半期の報告書で、ハッキングに関連する資金の取引を遮断するよう求める圧力があったものの、その立場を維持したと説明した。
THORChain創設者のジョン・ポール・ソーボーンセン氏も、パーミッションレスな取引を維持する方針を擁護した。不正資金をめぐる圧力を受けてプロトコルを停止することに警鐘を鳴らした。
同氏は「私の考えでは、THORChainのノード運営者が来週プロトコルを停止すれば、この実験は終わりだ」と述べた。
さらに、「制約を受けない中立的な決済手段として最後に残された砦が失われる。ほかに利用できる場所はなくなり、プロトコルは失敗したことになる」と主張した。

