
ビットコインの「2100万枚神話」崩壊か スタークウェアCEOの“年4%インフレ案”に信者ブチギレ
スタークウェアCEOのイーライ・ベン=サッソン氏が、ビットコインの供給上限2100万枚を見直し、年4%の新規発行に置き換えるべきだと提案した。秘密鍵の紛失で使えるビットコインが減り続けるという主張だが、ビットコイン支持者からは「それでは他の暗号資産と同じだ」と猛反発が起きている。

ビットコインの「絶対不可侵」とされてきた2100万枚の供給上限をめぐり、再び火種がくすぶり始めた。
スタークウェアCEOのイーライ・ベン=サッソン氏が火曜日、ビットコインの固定供給上限を撤廃し、代わりに年4%の発行率を導入すべきだと提案したのである。
ベン=サッソン氏は火曜日、Xへの投稿で、現在の2100万枚上限について「理にかなっていない」と主張した 。理由は、秘密鍵が時間の経過とともに失われていくからだ。氏は「時間が無限に進めば、すべての鍵はいずれ失われる」と述べた。
ハードウェアウォレット企業レジャーは昨年11月、最大400万BTCが焼却された、あるいは永久に失われた可能性があると推計している。ベン=サッソン氏は、それでもビットコインの供給には厳格な上限があるべきだとしたうえで、年4%のインフレ率は人類人口の増加率におおむね連動すると説明した。

ビットコインの固定上限は、長年にわたって最大の売り文句のひとつだった。「デジタルゴールド」という物語を支え、オーストリア学派的な経済思想にも通じる。すなわち、通貨供給を固定することで貨幣価値の毀損を防ぎ、理論上は長期的な購買力を守るという考え方だ。
多くのビットコイナーは、上限を変えることは、ビットコインをビットコインたらしめている本質を破壊する行為だと主張してきた。
ビットコイナー、年4%インフレ案に猛反発
ベン=サッソン氏の投稿には、すぐさま激しい批判が殺到した。
あるXユーザーは、ビットコインは最小単位である「サトシ」に分割すれば、2.1京単位まで細かく扱えると指摘した。これは、ベン=サッソン氏の「ビットコインが行き渡らなくなる」という主張への反論である。
しかしベン=サッソン氏は、秘密鍵が失われ続ける以上、その2.1京単位のサトシも、長期的にはゼロに向かって減っていくと反論した。
また別の反対派は、ビットコインの固定上限を外せば、他の暗号資産と変わらなくなると主張した。これに対してベン=サッソン氏は、インフレ率が固定されている限り、ビットコインは希少性を維持できると述べている。
ビットコイナーのあいだでは、秘密鍵の紛失はむしろ供給と需要のバランスを改善するものだという見方もある。アクセスできないビットコインは売ることができないからだ。
この考え方を強く支持している代表格が、ストラテジーの執行会長マイケル・セイラー氏である。同氏は、自身の死後にビットコインの秘密鍵を焼却する計画を明かしており、それを他のビットコイン保有者への「比例配分的な貢献」と表現している。つまり、自分のコインを市場から消すことで、残された保有者のビットコインをより希少にするという考え方だ。
解決策はジーキャッシュ案にあるのか
この議論に対し、ジーキャッシュ創設者のブライス・“ズーコ”・ウィルコックス氏は、ビットコイン開発者は現在ジーキャッシュのエコシステム内で検討されている提案を参考にすべきだと述べた。
プライバシー重視のネットワークであるジーキャッシュも、ネットワークの安全性をマイナーに依存しており、供給上限はビットコインと同じく2100万ZECに固定されている。
現在検討されている「ネットワーク・サステナビリティ・メカニズム」は、ZECの固定上限を維持したまま、ユーザーがトークンをバーンできる仕組みを導入するものだ。バーンされたトークンは、4年間にわたってブロック報酬として段階的に再発行される。これにより、ハード上限を引き上げることなく、マイナーへのインセンティブ低下を和らげる狙いがある。
ただし、ビットコインでこのような変更を実現するのは容易ではない。分散型ガバナンスの仕組み上、開発者、マイナー、ノード運営者のあいだで合意形成が必要になるからだ。
ビットコインの2100万枚上限は、単なる数字ではない。信仰であり、ブランドであり、価格を支える物語そのものでもある。そこに「年4%インフレ」というメスを入れようとすれば、炎上しないはずがない。

