
SEC、証券の「オンチェーン化」に本腰 40年以上前の名義書換代理人ルールを全面改正へ
SECが、証券の名義書換や記録管理を担う「トランスファー・エージェント」の規制を抜本的に見直す。トークン化証券やブロックチェーンによる記録管理が急速に広がるなか、1970〜80年代から大きく変わっていない「紙の時代」のルールを、オンチェーン時代に合わせて刷新する狙いだ。

米証券取引委員会(SEC)が、証券市場の「オンチェーン化」をにらみ、40年以上前につくられた規制の大改修に乗り出した。
SECは、証券の名義書換や投資家情報の記録管理を担う「トランスファー・エージェント(名義書換代理人)」に関する規則を抜本的に見直す新たな規則案を公表した。ブロックチェーンを使った記録管理やトークン化証券が、米国市場で存在感を増していることが背景にある。
今回の規則案では、登録、記録保存、資産保全、証券移転に関する既存ルールを更新するほか、市場インフラのデジタル化・自動化によって新たに生じるリスクに対応する規則を盛り込む。
SECはこう説明している。
「市場参加者は、ブロックチェーンをネイティブに利用する、いわゆる『オンチェーン』のトランスファー・エージェントを米国市場に導入しようと積極的に動いている」
SECが念頭に置いているのは、ブロックチェーンを使った証券保有記録の管理、トークン化ファンドの運営、さらには異なるブロックチェーン間を接続するクロスチェーン相互運用性といった仕組みだ。
だがSECによれば、現在の規制体系は、こうした新しい技術を十分に想定していない。
とりわけ問題視しているのが、サイバーセキュリティー、業務継続性、そして証券や投資家記録をいかに安全に保護するかという点だ。
規則案が成立すれば、トランスファー・エージェントには従来以上に厳しい報告義務が課されるほか、新たなコンプライアンス基準も導入される。
証券の譲渡制限などを記載する「制限的レジェンド」の取り扱いや、第三者サービス事業者を利用する場合のルールなども対象になる。

SEC’s proposed Transfer Agent Rules. Source: SEC
SECによれば、トランスファー・エージェント規則が最後に実質的な改正を受けたのは、1970年代後半から1980年代初頭にまでさかのぼる。
当時の証券業界では、まだ紙の証券と人手による記録管理が主流だった。
つまり今回SECが手を付けようとしているのは、「紙の証券」を前提につくられた規制を、「トークン化された証券」が行き交う時代に合わせて作り直す作業というわけだ。
SECは現在、今回の規則案について一般から意見を募集している。コメントの提出期限は、規則案が米政府の官報「フェデラル・レジスター」に掲載されてから60日後となる。
SECの規制改革、証券市場全体へ
もっとも、SECが見直しているのはトランスファー・エージェント規則だけではない。
法律事務所ケーヒル・ゴードン&ラインデルは、火曜日に顧客へ送付した分析資料の中で、現在のSECについて「規則の簡素化を使命として進めている」と指摘した。
SECは5月にも、上場企業に関するルールについて3つの大幅な変更を提案している。
企業が半期ごとの報告を選択できるようにすること、現在の提出企業の区分制度を簡素化すること、そして簡略化された登録証券発行制度を利用できる企業の範囲を広げることなどが柱だ。
さらにSECは先週、投資顧問会社や投資会社を対象としたカストディー規則の抜本的な見直し案をホワイトハウスに送付し、審査を求めた。
この見直しでは、投資会社などが顧客の暗号資産をどのように保管・管理するかについても変更が加えられる可能性がある。
実現すれば、投資顧問会社やファンドが連邦証券法を順守しながら暗号資産をカストディーする際の基準が、これまで以上に明確になる可能性がある。
証券の発行から保管、名義管理まで――。SECの規制改革は、米国の証券市場そのものを「オンチェーン時代」に合わせて組み替える段階へと入りつつある。

