人工知能(AI)ブームの裏側で、ニューヨーク州がデータセンター建設をめぐる議論に揺れている。
ニューヨーク州議会では現在、一定規模以上の新規データセンター建設を1年間停止する法案が審議されている。対象となるのは、5メガワット以上の電力を必要とする大型施設だ。法案が成立すれば、ニューヨーク全体でデータセンター建設を一時停止する全米初のケースになる可能性がある。
法案を支持する議員らは、AI向けデータセンターの急増によって、電力網や水資源、温室効果ガス排出への影響が拡大していると指摘する。環境当局に対し、電力消費や環境負荷、地域経済への影響などを調査するよう求めている。
近年、チャットGPTなど生成AIの普及によって、データセンター需要は急拡大している。データセンターはクラウドサービスや動画配信、金融システムだけでなく、AIの学習や推論を支える基盤インフラでもある。その一方で、大量の電力や冷却設備を必要とすることから、全米各地で環境負荷への懸念も高まる。
ただ、この法案には経済界やテクノロジー業界から強い反発も出ている。
ニューヨークポスト紙は社説で、この動きを「経済的自殺行為」と厳しく批判。同紙は、データセンターはAI時代の基幹インフラであり、建設を停止すれば投資や雇用が他州へ流出する恐れがあると指摘している。
実際、米国ではテキサス、ジョージア、バージニアなどがAI関連投資の誘致を積極的に進めている。そうした中で、ニューヨークだけが建設規制に動けば、「AI産業を歓迎しない地域」と受け止められかねないとの懸念もある。
特にニューヨークは金融、メディア、広告、法律サービスなど、AI活用が急速に進む産業が集積する地域だ。業界関係者からは「AI活用は推進する一方で、その基盤となるインフラ建設を止めるのは矛盾している」との声も出ている。
一方、支持派は「永久禁止ではなく、実態を把握するための一時停止措置だ」と反論する。電力需要の急増によって一般家庭や地域企業の電気料金が上昇する可能性もあり、まずは十分な調査が必要だという立場だ。
ニューヨークは過去にも、環境問題を理由に暗号資産マイニング施設への規制を導入した経緯がある。そのため今回の法案についても、テクノロジー業界では「新産業への規制強化の延長線上にある」と見る向きが少なくない。
最終的な判断は、キャシー・ホークル知事に委ねられる。知事はこれまで一律規制には慎重な姿勢を示しており、署名するか拒否権を行使するかが注目されている。
AI開発競争が激化する中、データセンターは半導体工場と並ぶ戦略インフラになりつつある。ニューヨークの判断は、AI時代における経済成長と環境政策のバランスを占う試金石となりそうだ。

