
米ニューヨーク州、暗号資産マイニングとAIデータセンターを一時禁止へ
米ニューヨーク州プラッツバーグで、暗号資産マイニングやAIデータセンターなど、大量の電力を消費する施設の新設・拡張を一時的に止める条例案が浮上した。可決されれば、300キロワット以上の電力を必要とする施設について、12カ月間にわたり土地利用の承認が停止される。

米ニューヨーク州プラッツバーグで、暗号資産マイニングやAI(人工知能)データセンターなど、大量の電力を消費する施設の新設・拡張を一時的に止める動きが出ている。
プラッツバーグでは9月3日、こうした施設の土地利用をめぐる一時的なモラトリアム(停止措置)について、市民から意見を聞く公聴会が開かれた。
市の公式発表によると、ウェンデル・ヒューズ市長が8月20日に提出した条例案は、「高エネルギー消費型コンピューティング施設」の設置や拡張について、12カ月間の一時的なモラトリアムを設けるものだ。
対象には、暗号資産マイニングやブロックチェーンの検証施設、AIコンピューティング、クラウドコンピューティング、大規模データセンター、機械学習、デジタル資産処理などが含まれる。
基準となるのは電力消費量だ。条例案では、300キロワット以上の電力需要を持つ施設などを「高エネルギー消費施設」と定義。可決されれば、こうした施設について、建築許可や用途関連の許可、建設計画の承認、営業許可などの自治体による承認が12カ月間停止される。
ただし、既存施設の通常の運営や、電力需要や処理能力を大幅に増加させない通常の修繕などは対象外となる。
「市の電力インフラを守る」
プラッツバーグ市が問題視しているのは、こうした施設が消費する電力の大きさだ。
市の条例案では、AIコンピューティング施設や大規模データセンターなど、新たな高エネルギー型のコンピューティング事業が登場する一方、既存のゾーニング規制には、こうした施設特有の電力需要やインフラ、冷却設備、騒音、消防・緊急対応などを十分に扱う規定がないとしている。
そのため市は、包括的なゾーニング規制の見直しを進める間、新たな施設の建設や既存施設の拡張を一時的に止める必要があると判断した。
現地メディアのWCAXによれば、ヒューズ市長は、今回の措置によって新たな暗号資産事業やデータセンターによって州から割り当てられた電力が大きく消費されることを防ぎ、今後のゾーニング規制を整備する時間を確保したい考えを示している。
もっとも、今回のモラトリアムはまだ成立していない。9月8日時点では市長による最終承認は行われておらず、市議会は9月17日に再び会合を開く予定だ。
2018年にはビットコインマイニングを停止
プラッツバーグにとって、暗号資産マイニングをめぐる規制強化は今回が初めてではない。
同市は2018年、住民から電気料金への懸念が相次いだことを背景に、米国でいち早くビットコイン(BTC)マイニングを事実上禁止した地域の一つとなった。当時のモラトリアムは18カ月間続いた。
その後、暗号資産マイニングを取り巻く環境も大きく変化している。
マイニング企業の中には、ビットコイン価格やトークン価格の低迷、マイニング難易度の上昇、電力コストの増加などを背景に、AIや高性能コンピューティング(HPC)へ事業の軸足を移す企業が増えている。
Cointelegraphが報じたように、一部のマイニング企業はAI関連事業への転換を進めている。
暗号資産マイニングからAIデータセンターへーー。
一見すると別の業界に見える両者だが、どちらも大量の電力を必要とする点では共通している。
かつてビットコインマイニングの電力消費を理由に規制へ踏み切ったプラッツバーグが、今度はAIまで含めて規制対象を広げようとしている。
背景にあるのは、単なる「暗号資産への反発」ではない。AI時代の到来によって、電力を大量に消費するコンピューティング施設そのものをどう地域社会に受け入れるのか――。プラッツバーグの動きは、その難題を象徴している。

