暗号資産業界に、また一つ“包囲網”が敷かれた。
欧州銀行監督機構(EBA)とニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は、国境をまたぐステーブルコイン事業を監視するため、覚書(MOU)を締結した。対象となるのは、暗号資産市場の中でも存在感を増し続けるステーブルコインだ。EBAとNYDFSの覚書は、ステーブルコインに関する監督情報の共有や危機時の連携を目的としている。
EBAは火曜日、この合意について、EUの暗号資産規制「MiCA(マイカ)」に基づく責務の一環だと説明した。ニューヨークとEUの間で、ステーブルコインの監督活動、市場動向、リスクに関する情報を交換し、対応を調整するための原則と手続きを定めたものだという。
一方のNYDFSも、この合意によって「ステーブルコイン関連事業に従事する事業者への監督を強化し、市場動向とリスクを把握し、ステーブルコイン市場の健全性を促進する」としている。
背景にあるのは、米欧の大手金融機関がステーブルコインを決済に使う実験を進めている現実だ。米国とEUでは、すでにステーブルコイン規制の整備が進み、銀行や大手金融機関もその利用に視線を向けている。DefiLlamaによれば、世界のステーブルコイン市場は水曜日時点で3190億ドル超に達した。日本円にすれば、実に約51兆円規模である。

Source: European Banking Authority
今回、両当局が共有する情報には、発行されたステーブルコインの種類、流通総量、保有者数、外部監査・内部監査の結果、そして特定の商品やサービスの規制上の位置づけなどが含まれる。
さらに覚書には、危機や緊急事態が起きた際に、両規制当局が互いに支援し、対応を調整するための枠組みも盛り込まれた。ただし、監視対象となるのは、監督下にある事業者のステーブルコイン関連活動に限られる。企業が行うすべての事業活動が対象になるわけではない。
米国では、ドナルド・トランプ大統領が7月にステーブルコイン規制を法律として成立させた。一方、EUのMiCAは2024年末に本格施行された。現在、ステーブルコイン市場の主役は米ドル建ての商品であり、とりわけテザーの「USDT」とサークルの「USDC」が時価総額で二大勢力となっている。
もっとも、成長一本槍の時代は終わりつつあるのかもしれない。
定量利回りプロトコル「アクシス」の共同創業者ジミー・シュエ氏は1月、コインテレグラフに対し、世界のステーブルコイン市場は急拡大の後、ほぼ頭打ちとなり、統合局面に入っていると語った。新たな規制、流動性の制約、そして現実世界の利回り上昇が、新規発行の重しになっているという。
シュエ氏はさらに、慎重なマクロ経済環境に加え、米国債利回りの競争力が高まっていることも、ステーブルコインの急拡大に対する投資家の意欲を鈍らせていると指摘した。
かつて「規制の外側」にあることを売りにしてきた暗号資産市場。その中核にあったステーブルコインも、いまや米欧当局の監視網の中に、はっきりと組み込まれつつある。

