
マネーグラム、送金の“中抜き”にメス ステラ上で独自ステーブルコイン「MGUSD」投入
国際送金大手のマネーグラムが、いよいよ本気で「オンチェーン送金」に踏み込んだ。同社は火曜日、ステラ上で米ドル連動型ステーブルコイン「MGUSD」を立ち上げた。

国際送金大手のマネーグラムが、いよいよ本気で「オンチェーン送金」に踏み込んだ。
同社は火曜日、ステラ上で米ドル連動型ステーブルコイン「MGUSD」を立ち上げた。狙いは明確だ。高コストで、時間もかかり、利用者から見ればどこで手数料を取られているのか分かりにくい国際送金の仕組みを、ブロックチェーンで作り替えることである。
マネーグラムによれば、MGUSDは同社アプリに組み込まれる。しかも、利用者自身が管理するセルフカストディ型ウォレットを通じて、ドル建て残高を保有し、世界中に資金を移動させ、現地通貨へ換金できるようにするという。まずは米国市場で始め、今後は世界展開を進める計画だ。
この新ステーブルコインを支える顔ぶれも、なかなか豪華である。
発行を担うのは、ストライプ傘下のステーブルコイン基盤「ブリッジ」だ。ブリッジは今年2月、米通貨監督庁、いわゆるOCCから、連邦認可のナショナル・トラスト・バンクとして営業するための条件付き承認を受けている。
さらに、MGUSDのミント、つまり発行とバーン、つまり償却のスマートコントラクト基盤には「M0」が使われる。ウォレット基盤には「ファイアブロックス」が入る。
要するに、マネーグラムは単に裏側の決済を効率化するだけではない。利用者のアプリ上に「デジタルドル残高」を持たせるところまで踏み込んだのである。
これは送金業界にとって、ひとつの節目と言っていい。
これまでステーブルコインは、主に事業者間の裏側の決済や、提携先への払い出しに使われることが多かった。だがMGUSDは、消費者が直接アプリ上でドル建て資産を持つ仕組みに近い。マネーグラム自身も、長年続けてきたステラ開発財団との提携を土台に、発行、残高管理、ネットワーク活用へ一段深く進むものだと説明している。
国際送金の“高すぎる手数料”
背景にあるのは、国際送金の根深い非効率だ。

Global cost of sending $200 in remittances. Source: World Bank
国際決済銀行、BISは2026年の報告書で、国境を越える決済は国内決済に比べて「より高コストで、利用しにくく、遅く、透明性にも欠ける」と指摘した。新しい決済制度が登場しているにもかかわらず、小口の国際送金では、いまなお数日かかることがある。利用者から見れば、途中で何が起きているのかも見えにくい。
世界銀行のデータによれば、2025年第3四半期に200ドル、約3万2000円を国際送金する際の平均コストは6.36%だった。つまり、手数料や為替マージンで12.72ドル、約2035円が消える計算になる。
これは国連の持続可能な開発目標、SDGsが掲げる「送金コスト3%」の目標の2倍を超える水準だ。
もちろん、ステーブルコインを使えばすべてが無料になるわけではない。利用者は入金時、出金時、為替スプレッド、現地での払い出し手数料などを負担する可能性がある。
それでも、ブロックチェーン上の決済そのものにかかるコストは極めて小さい。ステラの開発者向け資料によれば、ネットワークの最低手数料は1操作あたり100ストループ、すなわち0.00001XLM。ドル換算ではおよそ0.000002ドル、円にすれば約0.00032円にすぎない。
ステーブルコイン市場は51兆円規模に
ステーブルコインが決済企業の関心を集める理由は、コストだけではない。市場規模そのものが無視できない水準に膨らんでいるからだ。
デファイラマのデータでは、ステーブルコイン全体の時価総額は約3200億ドル、約51兆2000億円に達している。さらにシティは2025年9月、ステーブルコイン発行額が2030年までに基本シナリオで1兆9000億ドル、約304兆円に達する可能性があると予測した。
この巨大市場を前に、送金会社が手をこまねいているはずもない。

Stablecoin market cap. Source: DefiLlama
マネーグラムは5月5日、暗号資産取引所クラーケンと提携し、利用者が暗号資産を現金に換え、100カ国で受け取れる仕組みを発表した。さらに5月20日には、ストライプが育成したブロックチェーン「テンポ」と提携し、ステーブルコイン決済や送金取引の検証を支援する体制を整えている。
ライバルのウエスタンユニオンも、すでに動いている。5月5日、同社はソラナ上で米ドル連動型ステーブルコイン「USDPT」の展開を始めた。まずはボリビアとフィリピンで導入し、2026年中に40カ国以上へ拡大する計画だ。
国際送金の世界では、長年「速く、安く、分かりやすく」が掛け声だけで終わってきた。
だがステーブルコインの普及で、その構図は変わりつつある。マネーグラムのMGUSDは、単なる新商品ではない。国際送金ビジネスの“手数料の壁”を、ブロックチェーンがどこまで崩せるのか。その試金石となる一手である。
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