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Turner Wrightstaff writerRobert Lakin監修staff editor

日本でもビットコインETF解禁か 自民党が描く「円のステーブルコイン」構想

最新ニュース公開日Jun 2, 2026

ブロックチェーン推進議会連合は、日本の財務大臣に対し、暗号資産とブロックチェーンに関する提言を行った。

日本の暗号資産政策が、静かに次の段階へ進もうとしている。

自民党の議員グループが、暗号資産ETFの取引を可能にする法整備と、円建てステーブルコインの普及支援を政府に求めた。提言は片山さつき財務相に提出された

要するに、日本でもビットコインなどに連動するETFを、株式や投資信託のように扱える道を開き、同時に円建てステーブルコインをアジアの決済インフラとして育てようという話である。

これは、単なる暗号資産業界向けの要望ではない。

日本が、デジタル金融の主導権争いに本気で加わるのか。それとも、また海外勢が作ったルールに乗るだけで終わるのか。その分岐点に近い。

暗号資産ETFとは、ビットコインやイーサなどの暗号資産に連動する上場投資信託である。投資家は取引所やウォレットを使わず、証券口座を通じて暗号資産に投資できる。秘密鍵の管理もいらない。取引所破綻のリスクも直接には負わない。日本人にわかりやすく言えば、「ビットコインを株のように買うための商品」である。

米国では現物ビットコインETFが承認され、ウォール街の資金が暗号資産市場に流れ込んだ。香港などもETF市場を整えている。一方、日本は慎重だった。暗号資産の税制や規制が重く、ETFも制度上の壁に阻まれてきた。

その遅れを、このまま放置してよいのか。

今回の提言は、そこを突いている。

自民党側は、暗号資産ETFを投資家にとって分かりやすい投資手段として位置づけるべきだと主張した。単に投機的な商品としてではなく、金融市場における正式な投資手段として認めるべきだという立場である。

Finance Minister Satsuki Katayama (second from left) in a December 2024 meeting on Promotion of a Digital Society. Source: LDP

ここには、税制の問題も絡む。

日本では、暗号資産の売却益は原則として雑所得扱いとなり、所得によっては高い税率がかかる。一方、ETFとして証券市場で扱われれば、株式や投資信託に近い枠組みで整理できる可能性がある。投資家にとっては、税率、申告、損益通算、金融機関での取り扱いなど、実務面のハードルが大きく変わる。

つまりETF解禁は、単に「ビットコインを買いやすくする」話ではない。

暗号資産を、日本の既存金融システムの中に正式に取り込む話である。

Source: Pexels

もうひとつの柱が、円建てステーブルコインだ。

ステーブルコインとは、円やドルなどの法定通貨に価値を連動させたデジタル資産である。ドル建てではUSDTやUSDCが世界的に使われている。暗号資産取引、国際送金、企業間決済、そして将来的にはAIエージェント同士の少額決済にも使われる可能性がある。

しかし、現実にはドル建てステーブルコインが圧倒的に強い。

このままいけば、ブロックチェーン上の決済も、デジタル経済の資金移動も、ドルを中心に回ることになる。日本企業がアジアで取引する時も、円ではなくドル建てステーブルコインを使う。そうなれば、円の存在感はさらに薄くなる。

自民党側が円建てステーブルコインの普及を訴える背景には、この危機感がある。

アジアでオンチェーン金融を広げるなら、円建てステーブルコインの開発と利用を進めなければならない。そうした趣旨の発言も出ている。

日本人にとって円は当たり前の通貨である。だが、デジタル空間では当たり前ではない。ブロックチェーン上では、使いやすい通貨が勝つ。流動性があり、対応する取引所やウォレットが多く、企業が採用し、規制上の安心感がある通貨が広がる。

いま、その地位に最も近いのはドルである。

円は、このままでは脇役になりかねない。

すでに日本では、円建てステーブルコインをめぐる動きが出ている。国内スタートアップのJPYCは、円に連動するステーブルコインを発行している。さらに、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの国内三大金融グループも、金融庁の支援を受けながらステーブルコイン発行に向けた共同プロジェクトを進めている。

つまり、土台はでき始めている。

問題は、それを国内の実験で終わらせるのか、アジアの決済インフラに育てるのかである。

円建てステーブルコインが本当に使われるようになれば、企業間の国際決済は速くなる可能性がある。銀行送金のように数日かからず、24時間動く。中小企業でも海外取引の決済を効率化できる。サプライチェーン金融、越境EC、デジタルコンテンツ、AI決済にも応用できる。

だが、壁は高い。

ステーブルコインは発行して終わりではない。使える場所がなければ意味がない。取引所、ウォレット、銀行、決済会社、企業会計、税務、監査、マネーロンダリング対策。すべてがつながらなければ、決済インフラにはならない。

しかも、相手はドルである。

ドル建てステーブルコインはすでに世界中で使われている。流動性も厚い。暗号資産市場の基軸通貨になっている。円建てステーブルコインがそこに割って入るには、日本政府と民間金融機関が相当な覚悟で利用促進を進める必要がある。

今回の提言は、その号砲にも見える。

片山財務相は、米国など海外の暗号資産法制の進展に触れ、日本も世界の動きに遅れず前に進まなければならないとの考えを示した。

ここで重要なのは、「日本もやるべきだ」という空気が、ようやく政治の中心に近づいてきたことだ。

かつて日本は、暗号資産規制で先行した国だった。マウントゴックス事件やコインチェック事件を経て、交換業者登録制度を作り、利用者保護を整えた。だが、その後は慎重さが目立った。税制は重く、ETFは進まず、企業が暗号資産を扱うにはハードルが多かった。

一方で、米国はステーブルコイン法制を進め、現物ETFを導入し、暗号資産を金融市場の中に取り込んでいる。欧州も包括規制を整えた。香港、シンガポール、中東も金融ハブとして動いている。

日本がこのまま「安全だが遅い国」でよいのか。

今回の自民党提言は、その問いを突きつけている。

もちろん、リスクもある。

暗号資産ETFを解禁すれば、一般投資家が価格変動の大きい資産にアクセスしやすくなる。相場が上がればよいが、暴落すれば損失も広がる。ステーブルコインも、発行体の準備資産、償還能力、サイバーセキュリティ、マネーロンダリング対策が不十分なら、金融システムに不安を持ち込む。

だから、制度設計は慎重でなければならない。

だが、慎重さを理由に何もしなければ、デジタル金融の主導権は他国に移る。

ETFは米国に取られる。

ステーブルコインはドルに取られる。

オンチェーン金融の標準は海外企業に決められる。

日本の銀行や証券会社は、後からその仕組みに接続するだけになる。

それでよいのか。

今回の提言が示しているのは、暗号資産を危ない投機として遠ざける時代から、金融インフラとしてどう管理し、どう使うかを考える時代への転換である。

ビットコインETFは、投資の入口を変える。

円建てステーブルコインは、決済の土台を変える。

この二つが同時に議論されていることに意味がある。

日本は、暗号資産を投資商品としてだけでなく、通貨・決済・国際金融の問題として見始めている。

円は、ブロックチェーン上で存在感を持てるのか。

日本の金融市場は、暗号資産ETFを受け入れられるのか。

そして政治は、規制と成長のバランスを取れるのか。

自民党の提言は、まだ制度そのものではない。だが、デジタル金融をめぐる日本の迷いが、ようやく「前に進むかどうか」という問いに変わり始めたことを示している。

日本が動かなければ、円はデジタル金融の世界で脇役になる。

動けば、アジアのオンチェーン金融で主導権を握る可能性がある。

その分かれ道に、いま日本は立っている。

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