
EUの暗号資産規制「MiCA」が本格始動!面倒な申請を“ほぼ自動化”する新ツール登場
EUで暗号資産事業を続けるには、ライセンス取得からホワイトペーパー、顧客資産の管理まで厳しい審査が待ち受ける。そんな“規制地獄”に目を付けた世界的大手法律事務所リード・スミスが、MiCA対応を自動化する新兵器「アクエリアス」を投入した。

北米、欧州、アジアに30以上の拠点を構える世界的大手法律事務所、リード・スミスが、暗号資産企業の“MiCA対策”を自動化するコンプライアンス・プラットフォームを立ち上げた。
その名も「アクエリアス」。
欧州連合(EU)が暗号資産への監視を一段と強めるなか、複雑怪奇な規制対応に頭を抱える事業者を救う“切り札”になるという。
アクエリアスが自動化するのは、暗号資産の分類、規制当局向けホワイトペーパーの作成、デューデリジェンス、さらに環境・社会・ガバナンス、いわゆるESG情報の開示などだ。
要するに、これまで大量の書類と人手を必要としていた面倒な作業を、システム上で一気に処理しようというわけである。
リード・スミスによれば、アクエリアスは自動化された業務フローと法律の専門知識を組み合わせることで、欧州市場へ新規参入する企業や、EU域内で暗号資産サービスを拡大したい企業のMiCA対応を簡素化することを目的としている。
同社は今後、英国、アラブ首長国連邦、香港、シンガポールの暗号資産規制にも対応範囲を広げる計画だ。
7月1日で“猶予期間”終了、逃げ道を塞がれた暗号資産企業
アクエリアスの登場は、まさに絶妙なタイミングだった。
EUでは7月1日、MiCAの移行期間が終了した。最大限の経過措置を採用していた国でも、暗号資産企業は従来の国内特例に頼れなくなったのである。
MiCAはEU加盟27カ国を横断する包括的な暗号資産規制だ。
暗号資産サービス事業者に対し、営業ライセンスの取得、消費者保護、顧客資産の管理、組織運営など、幅広い義務を課している。
これまでは国ごとに規制の強弱や運用の違いがあった。だがMiCAによって、EU全体で“同じ物差し”が使われるようになった。
企業側にとっては制度が統一されるメリットもある一方、その基準を満たさなければ、巨大な欧州市場から締め出されかねない。
トランプ・メディアの「4050億円ビットコイン調達」にも関与
リード・スミスは、「オンチェーン」と呼ばれる専門チームを通じて、暗号資産やデジタル資産分野の法律業務を世界規模で展開している。
同社はこれまで、トランプ・メディアによる25億ドル、約4050億円規模のビットコイン財務戦略向け資金調達で、募集代理人側の法律顧問を務めた。
さらに、ナカモト・ホールディングスとカインドリーMDの合併にも助言し、ビットコインを企業財務に組み込む「ビットコイン・トレジャリー企業」の設立を支援している。
ライセンスを取れば終わり、ではなかった
もっとも、MiCAのライセンスを取得すれば一件落着というほど、話は甘くない。
欧州証券市場監督局(ESMA)は前週、すでに認可を受けた暗号資産サービス事業者を対象とする監督レビューを開始した。
審査の焦点となるのは、カストディアンが顧客の暗号資産をどのように保護しているのか、そしてシステム障害や不正アクセスなどの運用リスクをどう管理しているのかという点だ。
デジタル資産インフラ企業トーラスの共同創業者兼マネージングパートナー、セバスチャン・デシモズ氏は、カストディアンにとってMiCAライセンスの取得は「始まりにすぎない」と指摘する。
認可後も、サイバーセキュリティ、企業統治、顧客資産の保護能力をめぐり、規制当局から継続的に厳しい目を向けられるからだ。
つまり、一度試験に合格すれば卒業できるのではない。営業を続ける限り、抜き打ち検査のような状態が延々と続くのである。
米国のステーブルコイン法にEUが焦り?
さらにEUでは、MiCAのステーブルコイン規制を見直す議論も浮上している。
特に問題となっているのが、ユーロ以外の法定通貨に連動するステーブルコインの発行ルールだ。
ユーロニュースによれば、議論の背景には、米国が決済用ステーブルコインの連邦規制を定めた「ジーニアス法」を成立させたことがあるという。
ドル連動型ステーブルコインの普及を国家戦略として後押しする米国に対し、EUが現在の規制のままで競争できるのか。
MiCAは完成した法律ではなく、米国やアジアの動きをにらみながら、今後も修正を迫られる可能性がある。(Cointelegraph)
EUで暗号資産ビジネスを行う企業にとって、規制対応はもはや法務部だけの問題ではない。
ライセンス、顧客資産、サイバーセキュリティ、情報開示――。一つでも対応を誤れば、欧州市場から退場を命じられかねない。
そんな“MiCA地獄”を自動化によって乗り切ろうとするアクエリアス。
だが、規制当局の監視そのものまで自動で消してくれるわけではない。

