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Turner Wrightstaff writerRobert Lakin監修staff editor

米暗号資産規制、成立へ山場 トランプ氏の業界利権めぐり上院で火種

最新ニュース公開日Jun 2, 2026

多くの民主党議員は、選出された公職者による潜在的な利益相反に対処するための倫理規定が含まれていない暗号資産市場構造法案のいかなるバージョンも支持しないと述べている。

米国の暗号資産業界が待ち続けてきた法案が、またワシントンの議論の俎上に載る。

米上院は、戦没将兵追悼記念日の休会明けに入り、暗号資産市場のルール整備をめぐる「CLARITY法案」の審議を再開する見通しだ。

CLARITY法案は、暗号資産市場の構造を定める大型法案である。共和党が主導し、2025年7月に下院を通過した。狙いは、どの暗号資産を誰が監督するのか、取引所や発行体にどんな義務を課すのか、証券なのか商品なのかという長年の混乱を整理することにある。

暗号資産業界にとっては、まさに悲願である。

米国ではこれまで、証券取引委員会と商品先物取引委員会の間で、暗号資産をどう扱うかをめぐる縄張り争いのような状態が続いてきた。あるトークンは証券なのか。取引所は証券取引所として登録すべきなのか。ステーブルコインは決済手段なのか。トークン化株式は誰が見るのか。

ルールが曖昧なまま、企業は訴訟リスクを抱え、投資家は不安を抱え、規制当局は後追いで摘発する。

その状態を終わらせるための法案が、CLARITY法案だ。

同法案は、暗号資産に対する商品先物取引委員会の権限を強める内容になるとみられている。暗号資産業界の多くは、証券取引委員会よりも商品先物取引委員会の方が柔軟だと見てきた。だから業界にとって、この法案は単なる規制強化ではない。むしろ、活動しやすいルールを作るための「出口」でもある。

ある大手暗号資産企業の幹部は、この法案について「ドッド・フランク法以来の大きな金融規制法案になる」と語った。ドッド・フランク法とは、2008年の金融危機を受けて2010年に成立した米国の大型金融規制法である。つまり、今回の暗号資産法案は、単なる業界法案ではなく、金融制度全体にかかわる大改革として受け止められている。

Coinbase chief policy officer Faryar Shirzad. Source: Fox Business

だが、話はそう簡単には進まない。

最大の火種は、倫理規定である。

多くの民主党議員は、選挙で選ばれた公職者が暗号資産ビジネスから利益を得る可能性に強い警戒感を示している。とりわけ、トランプ大統領と暗号資産業界の関係が問題視されている。

トランプ氏は、自身に関連するミームコインや、家族が関わる暗号資産事業「ワールド・リバティ・ファイナンシャル」などを通じ、暗号資産業界との距離の近さを指摘されてきた。規制を作る側のトップが、同じ業界から利益を得ているのではないか。そう見られれば、法案そのものへの信頼が揺らぐ。

民主党の一部議員は、倫理条項がなければ法案には賛成できないと明言している。

ここが、上院審議の最大の関門である。

米上院で法案を通すには、通常60票の支持が必要になる。共和党が主導する法案であっても、民主党の一部協力がなければ前に進まない。つまり、暗号資産業界が望む規制明確化は、トランプ氏周辺の利益相反問題をどう処理するかに左右される可能性がある。

皮肉な構図である。

暗号資産業界は、規制の明確化を求めてきた。だが、その規制法案が進むかどうかは、暗号資産そのものの技術論ではなく、政治家と業界の距離をめぐる疑念に引っかかっている。

Source: Polymarket

さらに、反発しているのは民主党だけではない。

銀行業界からも強い不満が出ている。大手銀行のトップは、現行案のままでは受け入れられないと述べた。理由は、暗号資産企業が利用者の預かり資産やステーブルコイン残高に利息を支払えるようになる可能性があるためだ。

これは銀行にとって、かなり敏感な問題である。

銀行は預金を集め、その預金をもとに融資を行う。もし暗号資産企業が、ステーブルコインや利用者残高に高い利回りを付けられるなら、利用者の資金が銀行口座から暗号資産プラットフォームへ流れるかもしれない。

日本人にわかりやすく言えば、銀行預金よりも便利で高利回りの「デジタルドル口座」が、証券口座やスマホアプリの中に現れるようなものだ。銀行にとっては、預金基盤を脅かす存在になり得る。

だから銀行業界は警戒する。

暗号資産業界は「競争だ」と言う。

銀行は「規制の抜け穴だ」と言う。

この対立も、CLARITY法案を複雑にしている。

今週、上院では農業委員会と銀行委員会で進んだそれぞれの市場構造法案を一本化する作業が始まる可能性がある。早ければ数週間以内に上院本会議へ進み、8月までの採決が視野に入るとの見方もある。

ただし、日程は流動的だ。

ホワイトハウスの暗号資産担当者は、独立記念日ごろを目標にしていたが、倫理規定をめぐる対立が解けなければ、採決準備は遅れる。予測市場では、年内成立の可能性は55%程度と見られている。楽観でも悲観でもない。まさに五分五分に近い空気である。

一方、ステーブルコイン決済法であるGENIUS法も次の段階に入る。

同法は2025年7月に成立しており、米財務省、連邦預金保険公社、金融犯罪取締ネットワーク、外国資産管理局などが実施に向けた意見募集を締め切る予定だ。銀行団体の一部は意見募集期間の延長を求めているが、現時点では締め切りが予定通り進む見通しである。

GENIUS法は、成立後18カ月、または規制当局が最終ルールを出してから120日後に施行される。つまり、米国ではステーブルコイン規制の実装が進み、同時に暗号資産市場全体のルール作りも山場を迎えている。

これは、暗号資産業界にとって歴史的な分岐点である。

米国が包括的な市場構造ルールを作れば、世界の規制にも大きな影響を与える。日本、欧州、シンガポール、香港、ベトナム。各国が暗号資産やステーブルコインの制度設計を進める中で、米国のルールは事実上の国際標準になり得る。

だが、その標準がどのようなものになるかは、まだ見えない。

業界寄りの柔軟なルールになるのか。

銀行を守るための厳しい制限が入るのか。

政治家の利益相反を防ぐ倫理条項が盛り込まれるのか。

商品先物取引委員会と証券取引委員会の権限配分はどうなるのか。

暗号資産は、もはや周縁の金融ではない。

大手銀行が反発し、上院議員が倫理を叫び、ホワイトハウスが日程を気にし、業界がロビー活動を強める。これだけの政治的エネルギーが注がれていること自体、暗号資産が米国金融の中心問題になりつつある証拠である。

しかし、中心に近づくほど、暗号資産は自由ではいられなくなる。

規制の明確化は、業界にとって追い風である。だが同時に、政治、倫理、銀行利権、国家権力の中に組み込まれることでもある。

かつて暗号資産は、金融の外側から生まれた。

いま、その暗号資産が、ワシントンの法案審議室で自分の居場所を探している。

CLARITY法案は、その名の通り「明確さ」を掲げる。

だが、いま見えているのは明確さではない。

暗号資産の未来をめぐって、業界、銀行、政治家、規制当局がそれぞれの思惑をぶつけ合う、きわめて生々しい権力闘争である。

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