仮想通貨・ビットコインのニュースサイト|コインテレグラフ ジャパン
Kazuki Okubo
執筆者:Kazuki Okuboスタッフライター
Kazuki Okubo
校閲:Kazuki Okuboスタッフライター

「若返る注射」を暗号資産で売買 SNS美容ブームの裏で膨らむ“未承認薬”闇市場が拡大中

「若返る注射」を暗号資産で売買 SNS美容ブームの裏で膨らむ“未承認薬”闇市場が拡大中
ニュース

「もっと痩せたい」「肌を若くしたい」「男らしい顔になりたい」――。

インスタグラムやティックトックを開けば、そんな欲望を刺激する動画が次々に流れてくる。筋トレ、食事制限、美容医療、育毛、ホルモン、減量薬。

海外ではこれらをまとめて「ルックスマックス」と呼ぶ。直訳すれば「見た目の最大化」。要するに、顔も体も若さも、使える手段は全部使って“盛る”という思想だ。

だが、その裏側で怪しい市場が急拡大している。ブロックチェーン分析会社チェイナリシスによれば、未承認の「ペプチド」製品を売るグレー市場に、年間1億ドル、約160億円を超える暗号資産が流れ込んでいるという

ペプチドと聞いても、多くの日本人にはピンとこない。簡単に言えば、体の働きに影響を与える小さなたんぱく質のような成分だ。医療や美容の世界では、減量、肌の再生、筋肉、老化対策などに関連して語られる。いま世界的に有名な減量薬「オゼンピック」や「ウィゴビー」も、このペプチド系の薬として知られる。

問題は、正規の医療ルートではなく、ネット上の業者が「研究用」「美容目的」などとうたって、未承認品を個人に売っていることだ。

海外の美容マニアや筋トレ系インフルエンサーが「これで痩せた」「肌が若返った」と煽る。すると、普通の消費者が医師の診断もなく、海外サイトから購入する。支払いに使われるのが、ビットコインやステーブルコインなどの暗号資産だ。

なぜ暗号資産なのか。理由は単純だ。銀行やクレジットカード会社は、未承認薬の販売には厳しい。決済を止められる。

そこで業者は、国境を越えて送金しやすく、止められにくい暗号資産を使う。特に価格が米ドルに連動するステーブルコインは、業者にとって扱いやすい。ドル札の代わりに、デジタルな抜け道が使われているのだ。

数字も生々しい。チェイナリシスによれば、ペプチド販売業者に流れた暗号資産は、2025年第4四半期の約19億2000万円から、2026年第1四半期には約51億2000万円へ急増した。伸び率は159%。第2四半期には約62億4000万円に達するペースだという。

これは、従来の「違法薬物を闇サイトで買う」という話とは違う。買っているのは、いかにも危ない人たちだけではない。痩せたい会社員、若く見られたい中年男性、美容に敏感な女性、筋肉をつけたい若者。そういう“普通の人”が、インフルエンサーの言葉に背中を押され、グレーな医薬品市場に足を踏み入れている。

さらに怖いのは供給網だ。チェイナリシスは、一部のペプチド業者が中国の化学メーカーと関係していると指摘する。その中には、過去にフェンタニルやアンフェタミンの原料販売に関与したとされる企業も含まれている。つまり、美容と若返りの看板の裏に、薬物ビジネスの影がちらついている。

「若返り」「痩せる」「モテる」。人間の弱いところを突く言葉ほど、金になる。

そこに暗号資産の決済網が重なった。

かつて闇市場といえば、裏路地や怪しい掲示板の世界だった。いまは違う。スマホの画面、インフルエンサーの投稿、海外通販サイト、そしてステーブルコインが、一本の線でつながっている。

暗号資産は、国境を越える新しい金融インフラになりつつある。一方で、その速さと自由さは、規制の隙間を走る業者にも利用される。今回のペプチド市場はその典型だ。

「美しくなりたい」という欲望は、誰にでもある。だが、その欲望を暗号資産で買える未承認薬が吸い上げる時代になった。ルックスマックスとは、単なる海外の美容トレンドではない。コンプレックスを燃料にした、令和の“若返り闇市”なのだ。

Cointelegraphは、独立性と透明性のあるジャーナリズムに取り組んでいます。本ニュース記事はCointelegraphの編集方針に従って制作されており、正確かつ迅速な情報提供を目的としています。読者は情報を独自に確認することが推奨されます。編集方針はこちらをご覧ください https://jp.cointelegraph.com/editorial-policy