
ビットコイン62万BTC誤送金事件、韓国ビッサムが「売って逃げた客」への裁判に勝訴
62万ウォンのはずが62万BTC——。担当者のたった一つの操作ミスで400億ドル(約6兆3600億円)相当のビットコインが顧客口座に流れ込んだ、あの「事件」の後始末が法廷で動き出した。ビッサムが起こした4件の訴訟のうち、2件で一審勝訴が伝えられている。
前代未聞のミスの後始末が、ようやく法廷で形になり始めた。
韓国の大手暗号資産取引所「ビッサム(Bithumb)」が、誤って利用者の口座に入金してしまったビットコインの売却代金を取り戻すべく起こした訴訟で、一審勝訴を勝ち取った——。韓国の経済メディア「チョソンビズ」が報じた。
同報道によれば、ソウル中央地裁は26日(水)と27日(木)、ビッサムが利用者を相手取って提起した4件の訴訟のうち2件について、同社の請求を認める判断を下した。
27日の判決は1億9400万ウォン(約14万ドル、約2230万円)の請求に関するもの。26日の判決は500万ウォン(約3600ドル、約57万円)の請求だった。残る2件、約1480万ウォン(約1万700ドル、約170万円)と5億ウォン(約36万2000ドル、約5760万円)については、なお審理が続いている。
興味深いのは、この2件がいずれも「公示送達」の手続きを経て進められた点だ。通常の方法では被告に訴訟書類が届かなかった、と報道は伝えている。要は、金を手にした利用者と連絡がつかないのである。
「62万ウォン」が「62万BTC」に——担当者のひと押し
そもそもの発端は、2026年2月6日にさかのぼる。
ビッサムの説明によれば、同社はこの日、249人の利用者に合計62万ウォン——当時のレートで約420ドル(約6万7000円)——相当の特典を配るキャンペーンを実施しようとしていた。ところが担当者が、支払い単位の欄で「韓国ウォン」ではなく「ビットコイン」を選択してしまう。
結果、顧客の口座に振り込まれたのは62万BTC。当時の価値にして400億ドル(約6兆3600億円)超という、途方もない金額だった。
同社はその後、誤入金分の99.7%にあたる61万8212BTCを回収したと発表している。だが、口座凍結は間に合わなかった。一部の利用者は、その前に1788BTC相当をすでに売り払っていたのだ。
ビッサムは3月、誤入金されたビットコインを売却したまま代金を返さなかった利用者に対し、4件の「不当利得返還請求」訴訟を起こした。同社が求めているのはビットコインそのものではなく、売却によって得られた現金だとされる。
金融監督院も制裁手続きに着手
追及の手は、司法だけではない。
韓国の金融監督院(FSS)は2月6日のミスをめぐり、ビッサムへの調査に乗り出している。焦点は、保有してもいないビットコインを、なぜ顧客の口座に付与できてしまったのか——という一点だ。FSSは8月初旬にビッサムへ検査意見書を送付し、制裁手続きを正式に開始したと伝えられるが、最終的な処分内容はまだ公表されていない。
コインテレグラフは、FSSを所管する金融委員会(FSC)に対し、調査の進捗とビッサムへの制裁の見通しについて取材を申し込んだが、記事公開時点で回答は得られていない。
ビッサムをめぐる今年の逆風は、これだけにとどまらない。6月には、キム・ビョンギ議員が絡む採用優遇疑惑という今回とは無関係の捜査で、韓国警察が同社オフィスの家宅捜索に入った。さらに、マネーロンダリング対策(AML)違反を理由とする6カ月の一部業務停止処分についても、同社は不服を申し立てて争っている。この処分についてはソウルの裁判所が4月、判断が出るまで効力を一時停止させている。
たった一度の入力ミスが残した爪痕は、半年を過ぎてなお、消えていない。

