
かつて“世界一”だったビットコイン採掘大手「プーリン」がまさかの破産申請! 負債は最大819億円…栄光からの転落、その全内幕
2019年には世界最大を誇ったビットコイン採掘プール「プーリン」が、米ニュージャージー州の裁判所にチャプター11(連邦破産法11条)を申請した。負債総額は最大で約819億円にのぼる。電気代高騰がマイナーたちを次々と追い詰めるなか、生き残りをかけてAIへ活路を求める動きも加速している――。

かつて、この世界の頂点に立った男たちがいた。
シンガポールを拠点とするビットコイン採掘プール大手「プーリン(Poolin)」と、その米国子会社2社が、水曜日、ニュージャージー州の裁判所にチャプター11(米連邦破産法11条)を申請した。“採掘界の王者”とまで呼ばれた企業の、あまりにあっけない幕切れである。
裁判所への提出書類が突きつけた数字は、関係者に衝撃を与えた。プーリンが抱える負債は、推定で1億ドルから5億ドル(約164億~819億円)。一方で保有資産はわずか100万ドルから1000万ドル(約1億6000万~16億円)にとどまる。そして債権者の数は――なんと1万1件から2万5000件にのぼるという。
「栄光の残り香など、もうどこにもありません」。ある業界筋は、乾いた声でそう漏らした。
虎の子の“テキサス2拠点”も、ついに手放す
追い込まれたプーリンとその関連会社は、いま虎の子の資産を売り払おうとしている。
書類によれば、同社は西テキサスにある2つの採掘拠点を、ソー・カラップ(Thor CALAP LLC)に売却する承認を裁判所に求めているという。提示されたのは、総額5200万ドル(約85億円)の“ストーキングホース・ビッド”――いわば最低落札ラインを決める呼び水役の入札である。
内訳はこうだ。引き受け負債を含む「ターブッシュ(Tarbush)」拠点の資産に3700万ドル(約61億円)。そして電力権益や設備、採掘施設にひもづくすべての資産を含む「パイオート(Pyote)」拠点に1500万ドル(約25億円)。
もっとも、この売却がすんなり決まるわけではない。裁判所の監督下でオークションにかけられる予定で、入札の締め切りは9月8日。最後の最後まで、資産は競りにさらされることになる。
「世界一」から「17位」へ――残酷なまでの凋落
思い返せば、2019年、プーリンは世界最大のビットコイン採掘プールだった。
だが、いまは違う。ハッシュレート・インデックスによれば、同社のハッシュレート順位はわずか17位。市場シェアは、たったの0.2%である。かつて業界を睥睨した“王者”の面影は、もはやどこにもない。
電気代高騰の“真綿”――そしてマイナーたちはAIへ走る
なぜ、こんなことになったのか。答えは、彼らの首をじわじわと締め上げてきた「電気代」にある。
電力コストの上昇によって、ビットコイン採掘事業はいま、深刻な資金難に直面している。ある事業者は操業停止に追い込まれ、別の事業者は新たな収益源を血眼で探している。
その足音は、あちこちで聞こえていた。
今年2月には、NFN8グループとその関連会社2社が、テキサス州西部地区の裁判所にチャプター11を申請している。
一方で、まったく別の“活路”を見出したマイナーもいる。AIインフラへの転身である。2025年11月、ビットファームズ(Bitfarms)はビットコイン採掘事業を完全に畳み、AIおよび高性能コンピューティング(HPC)のデータセンターへと舵を切った。
その流れは、いよいよ本格化している。今週月曜日には、採掘大手のハット8(Hut 8)とアイレン(IREN)が、大型のAIインフラ契約を相次いで発表した。ハット8はAIデータセンター用地について、15年・98億ドル(約1兆6000億円)という巨額リース契約を締結。アイレンもまた、AI開発企業との間で28億ドル(約4585億円)にのぼるクラウドサービス契約を明らかにした。さらに7月初旬には、マラ・ホールディングス(MARA Holdings)が、最大2ギガワットの電力容量を持つテキサスの用地取得計画を発表。AIとデジタルインフラ事業の拡大を狙う。
資産運用大手バーンスタイン(Bernstein)は、こう指摘する。AIデータセンターが抱える計算能力の限界を埋めるには、ビットコインマイナーのような“第三者プロバイダー”との提携が不可欠になる、と。
かつて掘っていたのは、ビットコインだった。だがいま、彼らが掘り当てようとしているのは――AIという名の、新たな金脈なのかもしれない。

