某海外暗号資産取引所のデリバティブ部門が、米AI企業アンソロピックの名前を冠した永久先物を提供しはじめたようだ。
銘柄名はANTHROPICUSDT。米ドル連動型ステーブルコイン「USDT」建てで売買される。
アンソロピックは、対話型AIサービス「クロード」を開発する米国の有力AI企業だ。クロードは、オープンAIのチャットGPTと競合する生成AIサービスとして知られる。企業向けの文書作成、調査、プログラミング支援などで利用が広がっている。
ただし、アンソロピック上場は早くても2026年秋とされている。普通の個人投資家が、証券口座で同社株を買えるわけはない。
取引所の画面上では、ANTHROPICUSDTの価格は確認時点で1654.61USDT。24時間では7.04%安だった。24時間取引高は628万USDT。1ドル=160円換算で約10億円だ。
背景にあるのは、アンソロピックのIPO観測だ。ロイターは、同社が米国での新規株式公開に向けて、米証券取引委員会に非公開でIPO書類を提出したと報じた。
投資家の関心は、生成AI企業の成長性に熱烈に向かっている。
アンソロピックはチャットGPTの競合サービスを持つ。企業向けAIにも強い。プログラミング支援AIでも存在感がある。IPOが実現すれば、AI関連の大型案件になる可能性がある。
一方で、現時点では同社株を一般投資家が直接買うことは難しい。
そのため、暗号資産市場では「株式そのもの」ではなく、「未上場企業の価値期待に連動する形のデリバティブ商品」が出てきている。
こうした動きは今回が初めてではない。スペースXのIPO観測を背景に、複数の海外暗号資産取引所がスペースX連動の永久先物を投入した例がある。取引所側は、上場前の価格期待を取引できる商品として説明している。
暗号資産取引所では、エヌビディアやテスラ、金、原油などに連動する永久先物も扱われている。特にエヌビディアの先物は暗号資産取引所内でも人気銘柄だ。
法的な建てつけは、株式ではない。
ANTHROPICUSDTを買っても、配当や議決権は得られない。あくまで、価格差を売買する現金決済型のデリバティブだ。
永久先物は、満期のない先物商品だ。現物を受け渡すのではなく、価格の上下を取引する。資金調達率、いわゆるファンディングレートによって、ロングとショートの間で定期的に調整が行われる。仕組みとしては、差金決済取引、いわゆるCFDに近い。
その一方で、未上場企業への投資機会は限られている。暗号資産市場は、その周辺にデリバティブ商品を作っている。ANTHROPICUSDTは、その一例といえる。
