
ビットコイン反発失敗のワケ 強気派不在で5万5000ドル割れ警戒が浮上
原油安という追い風も、ビットコインには届かなかった。プットオプションへの需要急増とETFからの資金流出が続き、市場の弱さが改めてあぶり出されている。

ビットコインは木曜日以降、6万1000ドル(約988万円)の節目を取り戻せずにいる。米国とイランが60日間の停戦で合意し、原油価格が下落したことで市場には楽観ムードも広がったが、ビットコインにはその追い風が十分に届いていない。
むしろ市場で目立っているのは、下落に備える動きだ。ビットコイン価格の下値をヘッジする需要は異例の水準まで膨らみ、トレーダーの間では「次の目標は5万5000ドル(約891万円)なのか」との声が出始めている。

Deribit Bitcoin options premium put-to-call ratio. Source: Laevitas
デリビットにおけるビットコインのプット、つまり売る権利に支払われたプレミアムは金曜日、1億1500万ドル(約186億円)に達した。一方、コール、つまり買う権利に支払われたプレミアムは1600万ドル(約26億円)にとどまった。実に7倍の開きである。
この不均衡は過去12カ月超で最大となり、強気派の需要が極端に乏しいことを示している。ただし、この数字をもって、ただちに弱気派が確信を深めていると見るのは早計だ。

Bitcoin 30-day options delta skew (put-call) at Deribit. Source: Laevitas
ビットコインの30日物オプションにおけるデルタ・スキューは月曜日時点で19%だった。これは、マーケットメーカーが下方向の価格リスクを抱えたがっていないことを意味する。市場心理には明らかに警戒感が漂う。ただし、この状態は過去4週間にわたって続いており、いわば最近の「平常運転」でもある。
データは、ビットコインが6万ドル(約972万円)を上回る水準を維持できずにいるなか、弱気方向へのヘッジ需要が高まっていることと整合する。
ビットコインの弱さの一因として、マイクロストラテジー、現在のストラテジーをめぐる投資家の不安もある。同社は、配当の支払い能力や2027年に満期を迎える債務への対応を懸念されている。
ストラテジーは月曜日、直近の株式売却によって12億ドル(約1944億円)の現金を追加で確保したと発表した。さらに、将来の売却に備える形で12億5000万ドル(約2025億円)相当のビットコインを別枠で確保する措置も取った。
こうした対応は短期的な資金繰り不安を和らげるものではある。だが同時に、市場には別の不安も生む。すなわち、ビットコインの需給である。
今後数カ月にわたって実際の売却が行われなかったとしても、ストラテジーが現在17カ月分の配当原資を確保している以上、現状でMSTR株を追加発行する動機は薄い。弱気派にとっては、その事実だけでも心理的な追い風となる。
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ビットコインと金から半導体株へ、資金は回る
ビットコイン投資家の悲観とは対照的に、米株式市場では流れが変わりつつある。原油価格が4カ月ぶりの安値まで下落し、インフレ圧力が和らいだことで、株式市場には追い風が吹いた。
さらにゴールドマン・サックスのリポートは、S&P500企業の年間利益成長率を22%と予測した 。これにより、米国株の割高感をめぐる懸念も一定程度和らいでいる。

Source: X/KobeissiLetter
「ザ・コベイシ・レター」の分析によれば、個人投資家は金やビットコインから資金を引き揚げ、半導体株へと向かっているようだ。ブルームバーグが集計したデータでは、半導体ETFには累計200億ドル(約3兆2400億円)超の資金流入が確認されている。
その結果、iシェアーズ・セミコンダクターETF、ティッカーSOXXは81%上昇し、ヴァンエック・セミコンダクターETF、ティッカーSMHも60%上昇した。

US-listed Bitcoin spot exchange-traded funds weekly net flows, USD. Source: SoSoValue
一方、米国上場のビットコイン現物ETFからは、7週連続で資金が流出している。これにより、6月25日に付けた5万8050ドル(約940万円)の安値から力強く反発するという強気派の期待は打ち砕かれた格好だ。
今回の売りがハイテク株への資金ローテーションによるものかどうかは別として、ビットコイン現物ETFから大規模な純流出が続く限り、市場心理が改善する可能性は低い。
5万5000ドル(約891万円)を再び試す展開は、決して排除すべきではない。とはいえ、ビットコインのオプション市場で下落ヘッジ需要が増えていることをもって、弱気派の確信が強まっていると解釈するのは危うい。
むしろ今の市場は、誰もが下落を恐れて保険を買っている状態に近い。恐怖はある。しかし、それがそのまま暴落の予告状になるとは限らない。

