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Artem GライターAndrew Fenton監修編集者

「ポケモンカードに3億ドル!?」ビットコイン暴落でも止まらない“オンチェーン・ガチャ”狂騒 暗号資産市場で異変が起きていた

特徴公開日2026年7月16日

ビットコインが急落し、現物ETFから約45億ドル(約6,660億円)が流出した2026年6月。それでもブロックチェーン上では、ポケモンカードを引く「オンチェーン・ガチャ」に約3億2,400万ドル(約480億円)が投じられ、過去最高を更新した。実物カードのNFT化が生み出した、新たな「RWA(現実資産)」市場の実態を追う。

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2026年6月は、暗号資産市場にとって悪夢のような1カ月だった。

ビットコイン(BTC)は1カ月で20%以上下落し、約21カ月ぶりの安値を記録。さらに米国の現物ビットコインETFからは過去最大となる45億ドル(約6,660億円)が流出した。 

ところが、その裏側では奇妙な現象が起きていた。

ブロックワークス(Blockworks)のデータによると、ブロックチェーン上でポケモンカードなどの「ガチャ」を引くために使われた金額は、6月だけで過去最高となる3億2,400万ドル(約480億円)を突破。前年同月は5,000万ドル(約74億円)にも届いていなかった

Onchain gacha spending hit an all-time high in June 2026. Source: Blockworks. 

暗号資産が暴落する中、人々はむしろデジタルトレーディングカードのパックを次々と開封していたのである。

その原動力は、一攫千金への期待なのか。それともコレクション欲なのか。

いま、市場関係者の間で密かに注目されているのが、「トレーディングカード×RWA(現実資産)」という新たな巨大市場だ。

ポケモンカードが「NFT」になる時代

日本人には馴染み深い「ガチャ」。

一定額を支払うと、何が出るか分からない仕組みだ。

トレーディングカード市場では、この仕組みは「ブースターパック」として昔から存在している。

開封するまで中身は分からない。

レアカードが出れば数十万円、時には数千万円もの価値になることもある。

一方、外れカードなら数十円程度。

つまり購入者はカードそのものではなく、「確率」を買っているわけだ。

世界のトレーディングカード市場は調査会社によって92億ドル(約1兆3,600億円)から151億ドル(約2兆2,300億円)規模と推計される巨大市場へと成長している

中には数十万ドル(数千万円)で取引されるカードも珍しくない。

Some cards can fetch several hundred thousand dollars. Source: PriceCharting.

カードの価値を決める「鑑定」

高額カードには「本物か」「状態はどうか」を証明する仕組みが欠かせない。

そこで登場するのがPSA、ベケット、CGCといった鑑定会社だ。

カードの印刷位置、四隅、縁、表面の傷や汚れなどを細かく検査し、10点満点で評価する。

鑑定後は透明ケース(スラブ)に封入され、その評価が市場価格を大きく左右する。

同じカードでも評価が違えば価格は何倍にも変わる。

逆に未鑑定カードはリスクが高く、安く取引される傾向がある。

A Pokémon card sealed in a PSA slab. Source: eBay

実物カードをNFT化

ここへブロックチェーン技術を持ち込んだのが、コレクター・クリプト(Collector Crypt)やコートヤード(Courtyard)といったプロジェクトだ。

仕組みは意外にシンプルだ。

運営会社が鑑定済みカードを保管庫(ボールト)に預け、そのカード1枚ごとにNFTを発行する。

ユーザーはNFTを購入し、開封すると実際のカードに裏付けられたNFTを受け取る。

そのNFTは、

  • 保有し続ける
  • マーケットプレイスで売却する
  • プラットフォームへ買い戻してもらう
  • 実物カードを取り寄せる

といった使い方ができる。

ただし、この仕組みは「本当にそのカードが保管されている」という信用の上に成り立っている。

保管会社の管理体制や鑑定の信頼性、プラットフォーム自体の存続など、利用者は一定のカストディリスクを負うことになる。

ポケモン人気が市場を爆発させた

この市場が急成長した背景には、ポケモン人気の再燃がある。

調査会社サーカナ(Circana)によると、ポケモンは2025年に米国で売上25億ドル(約3,700億円)を記録し、おもちゃブランド首位となった

売上は前年から87%も増えた。

しかも購入しているのは子どもだけではない。

ミレニアル世代やZ世代の富裕層の中には、高級絵画よりも希少ポケモンカードへ投資する人も増えている

鑑定会社PSAでは依頼が殺到し、2026年6月には約1,000万枚もの未処理カードを抱え、一部サービスの受付停止に追い込まれた

そこへNFTによる即時売買という仕組みが加わったことで、取引のハードルは一気に下がった。

High-profile buyers like Logan Paul have helped push Pokémon cards into the spotlight. Source: Logan Paul.

コレクター・クリプトのマーケティング責任者ダコタ・キャンベル氏は、「従来のカード売買は時間もコストもかかった。トークン化によって瞬時に売買や所有権確認ができるようになった」と説明する。

同社は現在、約4,000万ドル(約59億円)相当のカードやコミックをトークン化しており、需要に対応するため毎週約200万ドル(約3億円)分を買い付けているという。

「ガチャ中毒」を加速させる仕組み

人気の理由は利便性だけではない。

各プラットフォームには「即時買い戻し(Instant Buyback)」機能がある。

開封してハズレカードだった場合、その場で約85%程度の価格で売却し、すぐ次のパックを開封できる。

つまり、

「引く」

「ハズレ」

「即売却」

「もう一度引く」

というループが数秒で完成する。

The “instant buyback” option is available on nearly all TCG platforms. Source: Phygitals.

従来のカード市場では売却まで何週間も必要だった。

ブロックチェーンでは数秒だ。

この構造はゲーム業界で問題視される「ルートボックス(Loot Box)」にも似ており、一部の国ではギャンブル規制の対象として議論されている

Sometimes users are driven by nothing more than the desire to “try their luck.” Source: X.

もっとも、キャンベル氏は「新興市場では投機は避けられない」と認めつつも、「最も熱心なのは『憧れの1枚』を探す本物のコレクターだ」と話す。

実際にカードを受け取る人も多い

とはいえ、利用者全員が投機目的というわけではない。

Duneのデータでは、コートヤードで発行されたNFTの5〜8%が毎週バーン(焼却)され、実物カードへの交換請求が行われている

Users burn 5% to 8% of Courtyard’s issued NFTs each week for physical cards. Source: Dune.

コレクター・クリプトでも約30%の利用者が最終的にカードを受け取り、多くのユーザーは72時間の買い戻し期限を過ぎてもNFTを保有し続けているという。

過去30日間だけでも、634人のユーザーに対し総額329万ドル(約4億9,000万円)相当のカードが発送された。

ブロックチェーンは「カード市場」を変えるのか

今回のブームは、ブロックチェーンが新しい市場を生み出したというより、昔から存在するトレーディングカード市場を効率化した結果とも言える。

もちろん、ガチャ要素や投機性を懸念する声はある。

しかし、それはオンチェーン市場だけの問題ではなく、従来のトレーディングカード業界全体が抱える構造でもある。

6月の記録的なオンチェーン・ガチャ人気は、

  • ポケモンカード市場の拡大
  • RWA(現実資産)のトークン化技術の成熟
  • ブロックチェーンによる高速売買

という3つの要素が重なった結果だった。

ただ、この熱狂が長続きするかはまだ分からない。

ガチャは熱狂するときも速いが、冷めるときもまた、一瞬だからだ。


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