
米英が“暗号資産ルール統一”へ——ステーブルコイン世界標準が始動、日本は取り残されるのか
米国と英国の財務当局が、ステーブルコインとトークン化金融のルール統一に向けて共同声明を発表した。国境を越えた決済やトークン化資産の実証実験も進める方針で、世界の金融インフラを巡る主導権争いが新たな段階へ突入している。

米国と英国が、「暗号資産時代の金融ルール」を事実上共同で作り始めた。
米財務省と英国財務省(HMトレジャリー)は7月14日、「未来の市場に関する大西洋横断タスクフォース(Transatlantic Taskforce for the Markets of the Future)」の提言を公表。ステーブルコインとトークン化金融(トークン化された株式や債券など)のルール整備で足並みを揃える方針を打ち出した。
今回の提言では、デジタル資産に関して4つの重点項目が盛り込まれた。
特に注目されるのは、民間主導で「トークン化資産の国際利用」を検証するグループの設立を検討する点だ。各国をまたぐ実証実験を通じて、ブロックチェーン上で発行される金融資産の実用化を加速させる狙いがある。
さらに米国の金融当局とイングランド銀行(英中央銀行)が協力し、トークン化資産に対する規制の共通ルールづくりを進めることも提言された。
ステーブルコインも「共通ルール」へ
両国はステーブルコインについても共同声明を発表した。
目的は、国境を越えて利用できる「ダイナミックなステーブルコイン市場」の構築だ。
共同声明では、
「両政府は、それぞれの制度に合わせながらも、同様のリスクには同様の規制を適用し、市場のゆがみや国際競争を阻害することなく金融の安定を実現する」
との考え方を示した。
米財務省の発表では直接言及されなかったものの、この内容は米国で昨年成立した「GENIUS法」とほぼ一致している。
GENIUS法では、ステーブルコインの発行体に対し、高品質かつ流動性の高い資産で少なくとも1対1の裏付けを持つことを義務付けている。
今回の米英共同声明でも、ステーブルコインは「少なくとも1対1で、高品質かつ流動性の高い資産によって完全に裏付けられるべき」と明記されており、事実上、同じ方向性を示した格好だ。
英国経済に「約6.5兆円」の追い風?
今回の共同声明に先立ち、英国政府が支援する業界タスクフォースは、トークン化金融が英国経済にもたらす効果についての報告書を公表した。
それによると、英国がトークン化金融の世界的な中心地となり、国内での利用も主要国並みに広がれば、**2035年までに年間最大440億ドル(約6兆5,000億円、1ドル=148円換算)**の経済効果が見込めるという。
報告書ではさらに、
- 2027年第1四半期までにトークン化された英国国債を発行すること
- ブロックチェーン上で金融取引を実証実験すること
なども提言している。
世界標準を巡る競争が本格化
今回の発表は、新たな法律を制定したわけではない。
しかし、世界最大級の金融市場を持つ米国と英国が、ステーブルコインやトークン化資産の規制で共通の方向性を打ち出した意味は小さくない。
これまで各国が独自ルールを整備してきたデジタル資産市場は、今後「国際標準」を前提とした制度設計へと移行する可能性が高まっている。
暗号資産業界では、規制の統一が進めば、クロスボーダー決済やトークン化された国債・株式などの普及が一段と加速するとの期待も広がっている。

