
「暗号資産の送金ミス」を終わらせる?ムーンペイが大型買収 “橋渡し不要”でウォレット入金が激変へ
暗号資産決済大手ムーンペイが、ロビンフッド・ウォレット出身者が設立したスタートアップ「グライド」を買収した。複雑なブリッジやスワップを裏側で自動処理し、「間違ったチェーンに送金して資産を失う」問題の解決を目指す。2026年に入り6件目となる買収の狙いとは。

暗号資産決済サービス大手のムーンペイ(MoonPay)が、暗号資産インフラ企業グライド(Glide)を買収した。両社は17日までに共同発表を行い、グライドが持つ「入金ルーティング技術」をムーンペイのサービスへ統合すると明らかにした。
法定通貨から暗号資産への購入サービスで知られるムーンペイは、今回の買収について「単なる決済企業から、デジタル資産インフラ企業へ進化するための一手」と位置付けている。
元ロビンフッド開発者が立ち上げた企業
グライドは2023年、ロビンフッド・ウォレット(Robinhood Wallet)の開発チームに所属していたトゥシャール・ソニ(Tushar Soni)氏とチンユー・トン(Qinyu Tong)氏によって設立された。
同社は、異なるブロックチェーンやウォレット、暗号資産取引所、さらにはクレジットカードなど、さまざまな資金源から簡単にウォレットへ入金できる仕組みを開発してきた。
現在は30のブロックチェーンと100種類以上のトークンに対応している。
「送金できない」が最大の壁だった
ソニ氏によると、Web3サービスを開発する企業を支援する中で、多くの利用者がウォレットへの入金段階でつまずいている現実を目の当たりにしたという。
資産は保有していても、
- 違うブロックチェーン上にある
- 違うトークンになっている
- 暗号資産取引所に置かれたまま
- クレジットカード残高として存在する
といった状況が多く、そのたびに「ブリッジ」や「スワップ」といった複雑な操作を要求され、多くのユーザーが途中で離脱していた。
ソニ氏は次のように振り返る。
「当初はWeb3向けウォレットインフラを作る計画でした。しかし、実際に顧客企業と仕事をする中で、本当の課題は『ウォレットへ資金を入れること』だと分かったのです。」

Qinyu Tong (left) and Tushar Soni. Source: Y Combinator
このためグライドは事業方針を転換。利用者がどのチェーンやトークンを保有していても、裏側で最適な経路を自動処理し、ユーザーがブリッジやスワップを意識する必要のない「統合入金システム」の開発へ注力した。
ムーンペイ「見えないインフラ」を目指す
買収後、この技術は「MoonPay Deposits」に組み込まれる。
同サービスはすでにTelegram内蔵ウォレット「Wallet in Telegram」やMoonshot、Paysafeなどでも採用されている。
ムーンペイ共同創業者兼CEOのアイヴァン・ソト=ライト(Ivan Soto-Wright)氏は、今回の買収について次のように説明している。
「今年の買収はすべて、企業やユーザーがデジタル資産を扱うために必要なインフラを一層ずつ積み上げるものだ。送金、保管、取引、会計──そのすべてをカバーしていく。」
さらに同氏は、暗号資産送金で最も多い失敗の一つが「誤ったチェーンへ誤ったトークンを送ってしまうこと」だと指摘。
将来的には、ブロックチェーンの複雑さをユーザーが意識する必要のないサービスが主流になるとの見方を示した。
買収金額は非公表
今回の買収額は明らかにされていない。
一方で、外部報道によると取引は現金ではなく全額株式交換で実施され、グライドの4人の開発チーム全員がムーンペイへ加わるという。
今回のグライド買収は、2026年に入って6件目の買収案件となる。
ムーンペイはこれまでにもソドット(Sodot)、ディセント(Decent)、ディーフロー(DFlow)、エンテンドレ(Entendre)、ドーン・ラボ(Dawn Labs)などを相次いで買収し、デジタル資産インフラ企業への転換を加速させている。
なお、同社にはスライブ・キャピタル(Thrive Capital)、パラダイム(Paradigm)、タイガー・グローバル(Tiger Global Management)、コーチュー(Coatue)などの著名投資会社が出資しているほか、昨年には米商品先物取引委員会(CFTC)の前委員長代行キャロライン・ファム(Caroline Pham)氏が最高法務責任者兼最高管理責任者に就任している。

