
カイコ、米アンバーデータを買収 暗号資産データ業界で進む“静かな再編”
暗号資産市場の「情報インフラ」をめぐり、またひとつ大きな再編が起きた。パリに拠点を置く暗号資産データ企業カイコは、米国を中心にデジタル資産データを提供してきたアンバーデータを買収した。

暗号資産市場の「情報インフラ」をめぐり、またひとつ大きな再編が起きた。
パリに拠点を置く暗号資産データ企業カイコは、米国を中心にデジタル資産データを提供してきたアンバーデータを買収した。背景にあるのは、銀行、資産運用会社、ヘッジファンドといった機関投資家の間で、暗号資産の市場データ、デリバティブ、オンチェーン分析をより広く、より精密に求める声が高まっていることだ。
カイコによれば、今回の買収により、同社の機関投資家向けデータ基盤は大きく拡充される。暗号資産市場は、取引所ごと、チェーンごと、商品ごとにデータが分断されやすい。その“バラバラの市場”を相手にする銀行、資産運用会社、ヘッジファンド、取引所、トレーディング会社に対し、より整理されたデータを提供する狙いがあるという。
今回、カイコが手に入れたのは単なるデータベンダーではない。
アンバーデータは、デリバティブ分析やAIを活用したリサーチツールに強みを持つ。なかでも、オプション分析プラットフォームGVOLは、カイコの機関投資家顧客から「ぜひ欲しい」と要望が多かった機能のひとつだったという。
取引は月曜日に完了した。ただし、買収金額や条件は非公表。カイコの最高経営責任者、アンブル・スビラン氏はコインテレグラフに対し、詳細は明かさなかった。
カイコにとって、今回の買収はこれで5件目となる。同社は、機関投資家向けの暗号資産市場データ、デリバティブ分析、オンチェーン基盤をまとめ上げる動きを強めている。買収後の統合会社は、世界で250社の機関投資家顧客を抱えることになる。
カイコは5月20日にも、オンチェーンデータ基盤を提供するコメスを買収している。コメスは、欧州連合の暗号資産規制であるMiCAの下で、暗号資産サービス提供者としてライセンスを取得している企業だ。カイコはこの買収についても、MiCA規制下でオンチェーンデータ基盤を拡張する動きだと説明している。

Kaiko platform homepage. Source: Kaiko.com
さらに2月には、ブルームバーグがカイコとの連携を発表している。ブルームバーグが保有するライセンス付き金融データを、ブロックチェーン上の環境で直接利用できるようにする取り組みだ。従来のオフチェーン型データベースから、トークン化市場に対応したデータ提供へと踏み出すものだった。
この動きが重要なのは、トークン化された実物資産、いわゆるRWA市場が拡大しているためだ。債券や株式、不動産などの金融商品をブロックチェーン上で扱う場合、オンチェーン上の資産価格が、実際の原資産価格ときちんと連動している必要がある。そこで、信頼できるデータの価値が一段と高まっている。
「伝統金融並み」の基準が必要に
暗号資産データ企業には、今後、伝統金融並みの厳格な基準が求められる――。カイコのスビランCEOは、コインテレグラフにそう語った。
「銀行、資産運用会社、ヘッジファンドの参入が進むことで、需要は加速している。今回の買収は、創業当初から進めてきた戦略の完成形だ」
さらに同氏は、アンバーデータの買収によって、カイコは「機関投資家が必要とするあらゆるデータ需要に応えられる、唯一の独立系かつグローバルに規制された企業」になったと強調した。
暗号資産業界では、データの信頼性をめぐる問題も根深い。

LIT trading price, listing time, minute-by-minute. Source: Kaiko
5月上旬には、カイコのデータプラットフォームが、ロビンフッドの暗号資産上場発表をめぐり、不自然な取引パターンを検出していた。一部のトレーダーが、上場発表の前に先回りして取引していた可能性があるというものだ。
これは、非公開の上場情報にアクセスしていた市場参加者がいたのか、あるいは公開情報をもとに極めて精度の高い“先回り手法”を構築していたのか――そんな疑念を呼ぶ事例だった。
暗号資産市場は、かつてのような“荒野”ではなくなりつつある。だが、その分だけ、誰が正しいデータを握り、誰が市場の裏側を見抜けるのかが、ますます重要になっている。
カイコによるアンバーデータ買収は、単なる企業買収ではない。暗号資産市場が、個人投資家中心の投機の場から、機関投資家向けの金融インフラへと姿を変える過程で起きた、象徴的な一手といえる。
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