
偽メール1通で57億円流出 ヒューマニティ・プロトコル攻撃に北朝鮮系ハッカー関与か
ヒューマニティ・プロトコルから3600万ドル(約57億6000万円)が流出した事件で、ビッサムを装った偽メールが使われていたことから、北朝鮮系の攻撃者が関与した可能性がある。クォントスタンプがそう指摘している。

ブロックチェーンセキュリティ企業クォントスタンプは、ヒューマニティ・プロトコルで発生した直近のハッキングについて、フィッシングメールに添付された不正ファイルが、北朝鮮に関連する攻撃者の関与を示していると明らかにした。
分散型IDを手がけるヒューマニティ・プロトコルは月曜日、従業員のノートパソコンが侵害されたことで、攻撃者に3600万ドル(約57億6000万円)相当のヒューマニティ(H)トークンを盗まれたと説明している。
問題の不正添付ファイルは、韓国の暗号資産取引所ビッサムから送られた「トークンのロックアップスケジュール更新」を装っていた。クォントスタンプのインシデント対応報告によれば、このファイルを開いたことでマルウェアがインストールされ、攻撃者は当該ノートパソコンを完全に遠隔操作できる状態になったという。

The phishing email that led to the Humanity Protocol compromise. Source: Quantstamp
クォントスタンプはさらに、このマルウェアが韓国企業ハンコムのデジタル証明書で署名されていたと指摘した。同社はこれを「北朝鮮による侵入で特徴的に見られるパターン」と表現している。マルウェアによって、攻撃者はヒューマニティ・プロトコルのディレクター、チョン・イー・ワイ氏のメタマスクウォレットの認証情報と秘密鍵をコピーできるようになった。
今回、北朝鮮との関連が疑われることで、同国に帰属されてきた一連の大規模な暗号資産窃盗事件に、また一つ事例が加わることになる。4月に発生した暗号資産関連の被害額6億3400万ドル(約1014億円)のうち、少なくとも5億7800万ドル(約925億円)が北朝鮮系の攻撃者に結びつけられている。
北朝鮮ハッカー、大型暗号資産ハッキングに相次ぎ関与
ブロックチェーンセキュリティ企業サーティックが5月に公表した報告書によると、2025年に暗号資産のエクスプロイトで失われた総額34億ドル(約5440億円)のうち、約20億ドル(約3200億円)が同じ攻撃グループに関連しているという。一方で、件数ベースでは全体の12%にとどまっている。サーティックは、こうした数字について、北朝鮮系攻撃者が「精度と規模」に重点を置いていることを示すものだと分析している。
同報告書によれば、過去10年間で北朝鮮系の攻撃者は、記録に残る263件の事件を通じて、推定67億5000万ドル(約1兆800億円)相当の暗号資産を盗み出した。
サーティックはさらに、北朝鮮が暗号資産窃盗を「産業化」し、国家収入を支える中核的な仕組みにしていると指摘した。こうした作戦は、同国体制の対外収入の大きな割合を占めているという。

Total DPRK crypto theft over the years. Source: CertiK/Skynet
北朝鮮はサイバー犯罪疑惑に対して反応することはまれだが、5月3日には同国外務省の報道官が、国営メディアである朝鮮中央通信を通じて声明を出し、疑惑を否定した。
報道官は、米国が北朝鮮による「存在しない『サイバー脅威』」について「誤った」物語を広めていると非難した。

