
「暗号資産ATM」は詐欺の温床か 米国で禁止拡大、被害額623億円の衝撃
デラウェア州とニュージャージー州の議員らは、暗号資産ATMを全面的に禁止する法案を前進させた。こうした措置が実際に導入されているのは、米国ではまだ3州にとどまっている。

米国で、暗号資産ATMへの包囲網がじわじわと狭まっている。
デラウェア州とニュージャージー州は、暗号資産ATMを禁止する法案を相次いで前進させた。背景にあるのは、こうした端末が詐欺に悪用されているとの州議員らの強い懸念だ。
デラウェア州下院の経済委員会は火曜日、暗号資産キオスクの所有、設置、運営を禁じる下院法案441号を本会議に送付した。
その前日には、ニュージャージー州上院の商業委員会も、暗号資産ATMを禁止する法案を全会一致で本会議に送っている。
すでに米国では、インディアナ州、テネシー州、ミネソタ州の少なくとも3州が、詐欺への悪用を理由に暗号資産ATMの全面禁止に踏み切っている。
FBIは5月、2025年に暗号資産ATMをめぐる苦情を約1万3500件受け付け、被害総額は3億8800万ドル、約623億円に上ったと明らかにした。苦情件数は前年比23%増、被害額は同58%増だった。苦情の半数超は50歳以上の人々に関するもので、被害額は3億200万ドル、約485億円を超えた。
デラウェア州で法案を提出したシンディ・ローマー議員は、暗号資産ATMについて「デジタル通貨を、弱者を食い物にする現金巻き上げ装置に変えている」と断じた。
さらに同氏はこう続けた。
「通常の暗号資産トレーダーは暗号資産ATMを使いません。手数料がはるかに高いからです。取引額の20%を超えることもあります。一方、オンライン取引所の手数料は0.4%から1%程度です。最も脆弱な人々から詐欺師が金を脅し取ることを可能にするようなビジネス構造を、支援する理由はありません」

A crypto ATM at a service station in Dover, Delaware’s capital. Source: Coin ATM Radar
デラウェア州の法案は、暗号資産ATMだけでなく、POSシステムやレジ係を通じた販売など、暗号資産ATMを「再現または代替」するような法定通貨から暗号資産への販売も禁止する内容だ。
また、法案が成立した場合、署名から90日以内にすべての暗号資産ATMを撤去することも義務づける。
違反した場合の罰金は最大1万ドル、約161万円。稼働中の端末が見つかった場合、運営者は利用者全員に手数料を返金しなければならない。利用者を特定できない場合は、消費者保護基金に支払うことになる。
ニュージャージー州の法案も同様に、暗号資産ATMの所有、管理、設置、運営、販売、販売の申し出を禁じるものだ。理由として挙げられているのは、暗号資産ATMの利用に伴う詐欺の「著しい増加」である。
同法案では、初回違反の罰金を最大1万ドル、約161万円とし、2回目以降は最大2万ドル、約321万円に倍増させるとしている。
業者側は反発
暗号資産ATM禁止の先陣を切ったのはインディアナ州だった。同州では3月に法律が署名され、米国初の禁止州となった。4月にはテネシー州が続き、5月にはミネソタ州も禁止法を成立させた。
米国の一部都市でも、暗号資産ATMを禁止する条例が成立、または検討されている。一方、アリゾナ州やカリフォルニア州など一部の州では、暗号資産ATMで扱える取引額に上限を設けている。
かつて世界最大の暗号資産ATM運営会社だったビットコイン・デポは、9000台を超える端末を展開していたが、先月、破産申請に追い込まれた。同社は、その大きな理由の一つとして規制圧力を挙げている。
暗号資産ATMの運営会社は以前から、自社の端末を通じて行われる詐欺について「責任はない」と主張してきた。多くの業者は、端末画面上に詐欺への注意喚起を表示したり、自主的な取引上限を設けたりして、不正取引の抑制に取り組んでいるとしている。
ビットコイン・デポは昨年12月、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)による暗号資産詐欺調査に対し、「第三者の詐欺師による犯罪行為について、当社が責任を負うことはできない」と説明していた。
同社はまた、端末や取引過程において「強力な警告と安全対策」を講じているとも主張している。
だが州議会の目には、もはやそれだけでは足りないようだ。高齢者を中心に被害が膨らむなか、暗号資産ATMは便利な金融インフラではなく、詐欺師の“現金回収装置”として見られ始めている。
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