
ビットコインは9月に上がる? 8万6000ドルが「壁」 FRB利上げ確率60%、米雇用統計に注目
ビットコインは8月に約25%上昇したものの、8万〜8万6000ドル(約1278万〜1374万円)の厚い売り圧力を突破できないまま9月を迎えた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の9月利上げ確率は約60%まで急上昇。今週発表される米雇用統計、イラン情勢を受けた原油高、そして大口投資家の買いが次の値動きを左右しそうだ。

ビットコイン(BTC)は9月を迎えても、重要な「壁」との攻防を続けている。
そこへ新たな重しとして浮上してきたのが、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測だ。市場は再びタカ派へと傾き始めた。
今週、ビットコイン投資家が押さえておくべきポイントは次の通りだ。
・市場は9月のFRB利上げ確率を約60%とみている。今週の米雇用関連指標が焦点となる
・米国によるイランへの新たな攻撃と、米国・ベネズエラ間の異例の石油供給合意を背景に原油価格が再び大きく動いている
・ビットコインは8月の月足確定を前に、8万6000ドル(約1374万円)まで続く重要な上値抵抗帯を突破できずにいる
9月利上げ観測が復活 ジャクソンホール後に市場が一変
今週は米国で複数の雇用関連指標が発表される。その一つ一つが、FRBの金融政策を巡る市場予想を動かす可能性がある。
すでに市場の視線はFRBに釘付けだ。
先週開催されたジャクソンホール経済シンポジウムでは、ケビン・ウォーシュ新FRB議長が就任後初となる基調講演を行った。
もっとも、ウォーシュ氏は今後の政策について具体的な手掛かりをほとんど与えなかった。それどころか、FRBが数十年にわたって情報発信の柱としてきた「フォワードガイダンス」について、「すでに歓迎される時期を過ぎた」とまで言い切った。
インフレについても警戒感を崩していない。
7月の消費者物価指数(CPI)と個人消費支出(PCE)価格指数が市場予想を下回ったにもかかわらず、ウォーシュ氏は現在の物価上昇率について「高すぎる」と評価した。
「これらの幅広いインフレ指標は、いずれも数年前のピークから大幅に低下した。しかし、ここ数年の改善ペースはより限定的だ。今夏のPCEとCPIが予想より良い数字だったからといって、基調的なトレンドが意味のある形で改善したと判断するには至らない」
市場はすぐに反応した。
CMEグループのフェドウォッチによると、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げが実施される確率は再び過半数を突破。記事執筆時点では60%弱に達している。
わずか1週間前には41.4%だった。
わずか数日で「利上げなし」優勢から、「利上げあり」優勢へとひっくり返った格好だ。

Fed target-rate probability comparison for September FOMC meeting (screenshot). Source: CME Group
ただし、この利上げ観測に冷水を浴びせる可能性があるのが雇用市場だ。
金曜日には8月の米雇用統計が発表される。非農業部門雇用者数は前月比5万人増が予想されている。6月には2万3000人減を記録していた。
その前の水曜日には民間部門の雇用統計、木曜日には新規失業保険申請件数が発表される。
市場分析を手掛けるコベイシ・レターはXで「すべての目が労働市場に向けられている」と指摘した。
9月のFOMCを前に発表される最後の主要雇用データだからだ。
しかも、米国の雇用統計には不穏な材料がある。
コベイシ・レターは米労働統計局(BLS)のデータを引用し、今年3月までの12カ月間について雇用者数がさらに7万9000人下方修正されたと指摘した。
「これは昨年の過去最大となる91万1000人の下方修正に続くものだ。年間ベースの下方修正は4年連続となり、2008年の金融危機後、2010年まで続いた記録に並んだ」
つまり米労働市場は、ここ数年にわたって「最初に発表された数字より弱かった」ということになる。
景気が想定以上に弱ければ、FRBが利上げに踏み切るハードルは当然高くなる。

US employment data revisions. Source: The Kobeissi Letter on X.com
米国とイランの緊張激化 原油価格が急騰
今週のマクロ市場で、もう一つ無視できないのが原油だ。
地政学リスクが再び市場を揺らしている。
米国によるイランへの新たな攻撃を受け、月曜日には北海ブレント原油が1バレル=90ドル(約1万4400円)を突破。1週間ぶりの高値圏まで上昇した。
米WTI原油も85ドル(約1万3600円)を突破し、記事執筆時点では1日で2.5%上昇している。

CFDs on Brent crude oil one-day chart. Source: Cointelegraph/TradingView
余波は株式市場にも及んだ。
ドイツのDAX指数は0.7%下落するなど、欧州株は売りに押された。

DAX one-day chart. Source: Cointelegraph/TradingView
ドナルド・トランプ米大統領は、イランの主要石油拠点であるカーグ島が再び標的になっていることを示唆した。
トゥルース・ソーシャルへの投稿では、石油関連施設が爆撃されているように見えるAI生成動画を公開。カーグ島について「粉々に吹き飛ばされている」と表現した。
そして、その直前にはもう一つの巨大な石油ニュースが飛び込んできた。
米国がベネズエラの石油埋蔵量に対して大きな影響力を持つことになる大規模エネルギー合意だ。
CNBCなどが引用したベネズエラ暫定大統領デルシー・ロドリゲス氏の説明によると、目標とされる原油生産量は日量150万バレル。
対象となる埋蔵量は650億バレルにのぼり、現在の価格では約5兆4000億ドル、円換算で約863兆円という途方もない規模になる。
トランプ氏はトゥルース・ソーシャルで、これを「史上最大の石油取引」と表現した。
ビットコイン「50週線」を巡る攻防
では、肝心のビットコインはどうなっているのか。
日曜日の週足確定を前に売り圧力が強まり、BTCは一時、50週指数平滑移動平均線(EMA)の7万7269ドル(約1235万円)を割り込んだ。
ただ、ここでは買いが入り、重要なサポートラインを2週連続で守った。
直近の上昇によって、BTCは2025年11月以来初めて、50週EMAを上回って週足を確定することにも成功している。

BTC/USD one-week chart with 50 EMA. Source: Cointelegraph/TradingView
一方、暗号資産分析企業グラスノードの共同創業者ラファエル・シュルツェクラフト氏が注目しているのが、50週単純移動平均線(SMA)だ。
現在は8万307ドル(約1283万円)付近に位置する。
BTC/USDはまだ、この50週SMAを週足で明確に奪還できていない。
過去には、このラインを突破した後にさらなる上昇が続いたケースがあるだけに、市場参加者にとって無視できない水準となっている。

BTC/USD chart with periods above and below 50-week SMA. Source: Rafael Schultze-Kraft on X.com
8万〜8万6000ドルに「巨大な壁」
8月の月足確定を前に、ビットコイン強気派は正念場を迎えている。
BTC/USDの8月の上昇率は約25%。数字だけを見れば強烈な上昇だ。

BTC/USD monthly returns (screenshot). Source: CoinGlass
ところが、市場史上最大規模となった暗号資産のショートポジション清算を経ても、買い手は8万ドル(約1278万円)を超える重要な抵抗帯を完全には取り戻せていない。
トレーダー兼アナリストのレクト・キャピタル氏は現在の状況について、こう説明する。
「ビットコインは依然としてマクロの下降トレンド抵抗線の下で推移している。一時的に上ヒゲでこれを突破したにすぎない」
そして続けた。
「ここは依然として極めて重要な抵抗線だ。その下にいる限り、ビットコインはマクロで高値を切り下げる構造を続けることになる」

BTC/USD one-month chart. Source: Rekt Capital on X.com
レクト・キャピタル氏によれば、この抵抗線を明確に突破できれば、ビットコインの「4年サイクル」にとっても大きな意味を持つ。
今回の弱気相場が過去の弱気相場より短期間で終わる可能性が出てくるためだ。
だが、問題は一つのトレンドラインだけではない。
暗号資産取引所の注文板では売り注文が厚みを増しており、上値抵抗は8万6000ドル(約1374万円)まで続いている。
つまり本格的な上抜けには、これまで以上の買い圧力が必要になる。
グラスノードは先週のリサーチでこう指摘した。
「われわれが追跡する上値の構造は、すべて8万1000〜8万6000ドル(約1294万〜1374万円)の範囲に集中している。このゾーンこそ、今回の回復局面の需要が試される場所だ」
大口投資家は買っている 小口は売っている
この8万6000ドルの「壁」を突破できるかどうか。その鍵を握る可能性があるのが、大口投資家だ。
グラスノードによれば、長期保有者が持つ約105万BTCの取得価格は、8万3000〜8万6000ドル(約1326万〜1374万円)の範囲に集中している。
ここでいう長期保有者とは、保有するBTCを6カ月以上売却していないウォレットを指す。

BTC supply distribution by wallet cohort. Source: Glassnode
オンチェーン分析企業クリプトクアントも、9月相場を占ううえで大口投資家の動きを重視している。
同社のデータを見ると、8月の買い需要を支えたのは大口だった。
その一方で、小規模投資家は価格が損益分岐点まで戻ったところで利益確定、あるいは市場から撤退していた。
8月1〜30日の動きをウォレット規模別に見ると、
- 100BTC以上を保有するウォレット:約6万BTCを買い増し
- 1〜100BTCを保有するウォレット:約3万3000BTCを売却
- 1BTC未満を保有するウォレット:約1万4000BTCを売却
という鮮明な差が出た。
クリプトクアントは、この構図を端的にこう表現している。
「これが8月のすべてだ。大口保有者がブレイクアウト時の供給を吸収し、小口保有者は上昇を市場から退出する機会として利用した」

Bitcoin accumulation data by wallet cohort (screenshot). Source: CryptoQuant
つまり、9月のビットコイン相場にとって「大口が買い続けるか」は極めて重要になる。
クリプトクアントは、大口投資家が最近取得したBTCを8万ドル(約1278万円)以下で売り始めるようなら、「大口が蓄積している」という現在の強気シナリオそのものを見直す必要があると指摘している。
8万〜8万6000ドルには分厚い売りの壁がある。
FRBは利上げに傾き、原油市場では地政学リスクが再燃。その一方で、大口投資家はBTCを買い続けている。
9月のビットコインが再び上昇トレンドへ戻れるのか。それとも8万ドルを割り込み、再び弱気相場へ引き戻されるのか。
まずは今週の米雇用統計と、8万6000ドル突破の成否が最初の分岐点となりそうだ。

