米テキサス州が、ビットコインをめぐる新たな一手に出た。
同州は、州が設けた「戦略的ビットコイン準備金」について、これまで利用していたブラックロックの現物ビットコインETF「iシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)」から、ビットコインそのものを直接保有する体制へ移行しようとしている。テキサス州会計監査官事務所が公表した調達文書で明らかになった。
要するに、これまでは「ビットコインに連動するETF」を持つ形だったが、今後は第三者のカストディー事業者を通じて、州としてビットコインを直接管理する方向に舵を切るということだ。
州会計監査官事務所は、5月7日に提案依頼書(RFP)を公表。さらに木曜日の発表で、戦略的ビットコイン準備金の運営に関わる助言委員会のメンバーも明らかにした。テキサス州議会の資料でも、この準備金制度は暗号資産への投資と、その運営を助言する委員会の設置を含むものと説明されている。
1000万ドル、約15億9000万円をすでに配分
テキサス州はこの戦略的ビットコイン準備金に1000万ドル、約15億9000万円を配分している。これまでは、ビットコインを直接保管する体制が整うまでの“つなぎ”として、ブラックロックのIBITを購入していた。
実際、2025年11月には、州会計監査官事務所がIBITを一時的な保有手段として取得したことも報じられている。
今回のRFPで州が求めているのは、単なる保管業者ではない。選ばれた事業者は、テキサス州の名義でビットコインを取得し、保管し、管理し、さらに保有状況を報告する役割まで担う。
しかも対象はビットコインだけに限られない。文書上は「その他の適格な暗号資産」も含まれており、将来的にはビットコイン以外の大型暗号資産が準備金に組み込まれる余地も残されている。

RFP issued by the Texas Comptroller of Public Accounts. Source: Texas Comptroller
ETFではなく「オンチェーンで持つ」ことの意味
今回のポイントは、テキサス州がETFによる間接保有から、オンチェーン上の直接保有へと踏み出そうとしている点にある。
ETFであれば、投資家や州は証券としてビットコインの値動きに連動する商品を保有する。一方、直接保有に切り替えれば、州の資産としてビットコインそのものを管理することになる。
RFPでは、契約締結から60日以内に、既存のIBIT保有分を直接保管のビットコインへ移す計画も求めている。つまり、テキサス州は「とりあえずETFで持っておく」段階から、「州の準備資産としてビットコインを本格的に管理する」段階へ進もうとしているわけだ。
求められる体制も厳しい。機関投資家向け水準のセキュリティー管理、標準および個別の報告体制、さらに準備金がどれだけのビットコインや暗号資産を保有し、その評価額がいくらなのかを示す専用ウェブサイトの設置まで条件に含まれている。
背景にある「インフレヘッジ」への期待
では、なぜ州政府がここまでビットコインに前のめりになるのか。
準備金創設を支持する側は、ビットコインをインフレや経済変動に対するヘッジ資産と位置づけている。金のような準備資産のデジタル版として、州財政の一部に組み込もうという発想だ。
今回公表された助言委員会には、投資業界の経験者、暗号資産関連企業の経営者、デジタル資産に詳しい法学者、ビットコインマイニング企業の幹部らが名を連ねる。委員会は今後、カストディー体制、リスク管理、州議会や住民への開示方法、投資戦略のガバナンスなどについて助言する。
テキサス州はもともと、ビットコインマイニング企業の集積地としても知られる。今回の動きは、単なる投資判断というより、同州が暗号資産産業の中心地としての存在感を高める狙いもありそうだ。
ETFで“間接的に持つ”のか、それともビットコインそのものを“州の資産”として抱えるのか。テキサス州の選択は、米国の州政府による暗号資産保有のあり方を占う試金石になりそうだ。

