通信アプリ「テレグラム」の創業者パベル・ドゥーロフ氏が、暗号資産トンコイン(TON)の名称を「グラム」に変更する方針を示した。
グラムは、もともとテレグラムが独自ブロックチェーン計画で使う予定だった暗号資産の名称だ。計画はいったん米当局との対立で頓挫したが、数年を経て、その名前が市場に戻ってくる。
ドゥーロフ氏は自身の公式チャンネルで、トンコインをグラムに改名すると表明。ネットワーク名の「TON」は残し、通貨名だけをグラムに変える。移行には約3週間かかるという。
市場はすぐに反応した。TON価格は発表後、24時間で13%超上昇し、一時2.26ドルをつけた。1ドル=160円換算で約362円だ。その後は2.12ドル前後、約339円で推移した。
TONはこの1カ月で約58%上昇している。ただし、2024年につけた過去最高値8.25ドル、約1320円からはなお約74%下回る水準だ。
背景には、テレグラムとTONの関係修復がある。
テレグラムはかつて、自社主導でブロックチェーン「テレグラム・オープン・ネットワーク」を立ち上げようとした。通貨名はグラムだった。だが米証券取引委員会(SEC)との対立を受け、2020年に計画を放棄した。その後、TONはコミュニティ主導のプロジェクトとして存続してきた。
流れが変わったのは今年5月だ。ドゥーロフ氏は、テレグラムがTON財団に代わってネットワークの主要な推進役となり、最大のバリデーターになると発表した。取引手数料の引き下げやブロック生成速度の改善も進められている。
今回のグラム改名は、その延長線上にある。
テレグラムにとって重要なのは、巨大な利用者基盤だ。メッセージアプリの中にウォレット、決済、ミニアプリ、ゲーム、暗号資産取引が入れば、TONは単なるブロックチェーンではなく、テレグラム経済圏の決済インフラになりうる。
2024年には、ハムスター・コンバットやノットコインといったテレグラム発の暗号資産ゲームが一時的に人気を集めた。ブームは短命だったが、テレグラム上で暗号資産を配り、使わせ、取引させる導線があることは示した。
今回の「グラム」復活は、その導線をより分かりやすくする動きだ。
TONという名前は暗号資産業界では知られている。だが、一般ユーザーにはやや説明がいる。一方、グラムはもともとテレグラム由来の通貨名として設計された名前だ。ブランド上のつながりは見えやすい。
テレグラムはTONを完全に作り直すわけではない。ネットワーク名は残し、通貨名を変える。つまり、技術基盤はTON、通貨ブランドはグラムという整理だ。
かつて規制で封印された名前が、今度は市場の材料として戻ってきたかたちだ。
価格は反応したが、過去最高値にはまだ遠い。今回の改名が一時的な材料で終わるのか、テレグラム経済圏の本格拡大につながるのかはこれからだ。
それでも方向性ははっきりしている。テレグラムは、TONを再び自社の中核インフラに近づけようとしている。
TONは、失われたはずの「グラム」という名前を取り戻す。
