
仏AMF、MiCA免許取得の期限を6月30日に設定
欧州連合の暗号資産市場規制は2024年に初めて施行されたが、暗号資産サービスプロバイダーには枠組みに完全に準拠するための猶予期間が与えられた。

欧州の暗号資産業界に、また一つ緊張が走っている。
フランスの金融市場庁(AMF)は、同国で免許を持たずに営業している暗号資産関連企業に対し、6月30日までに必要な認可を取得するよう警告した。期限までに対応できない企業は、フランス市場から撤退しなければならない。
AMFのマリーアンヌ・バルバ=ラヤニ長官は木曜日の記者会見で、期限までに免許を取得できない企業について、顧客を移管し、事業を終えるための「秩序ある縮小計画」を用意する必要があると述べた。
つまり、突然サービスを止めて顧客を置き去りにすることは許さない、ということだ。
背景にあるのは、EUの暗号資産市場規則「MiCA」である。MiCAでは、暗号資産サービス提供事業者に対し、EU域内で事業を行うための免許取得を義務付けている。ただし、EU加盟27カ国のいずれかで免許を取得すれば、その免許を使って他の加盟国でも事業展開できる。いわゆる「パスポート」制度だ。
一見すると、企業にとっては便利な仕組みに見える。だが、この制度をめぐって、EU加盟国の間では早くも温度差が表面化している。
規制権限は各国か、それともESMAか
焦点になっているのは、欧州の暗号資産規制を誰が主導するのか、という問題だ。
現在は各国当局が免許審査を担い、その免許がEU域内で相互に使える形になっている。しかし、規制の統一性を高めるため、欧州証券市場監督機構(ESMA)に監督権限を集中させるべきだ、という議論も出ている。
ただ、これには反発もある。ESMAはパリに本部を置く機関であり、規制権限を一元化すれば、各国当局の裁量が奪われる。さらに、各国で取得した免許をEU全体で使える現在のパスポート制度そのものが揺らぎかねない。
マルタ金融サービス庁(MFSA)の担当者は、MiCAの規制構造を変更するのは「時期尚早」だと指摘している。MiCAは2024年に法的適用が始まったばかりであり、その影響を見極めるにはまだ時間が必要だ、という立場である。
MiCA見直しの可能性も
一方で、EU側も現行制度が最終形だとは考えていないようだ。
2026年4月、欧州委員会の金融サービス部門で技術革新やデジタル変革、サイバーセキュリティを担当するピーター・ケルステンス氏は、暗号資産業界の成熟に合わせてMiCAを見直す可能性に言及した。
既存の規定を変更したり、暗号資産サービス提供事業者に新たな義務を課したりする場合には、EU当局が市民や業界関係者から意見を募るという。
フランス当局が突きつけた6月30日の期限は、単なる国内規制の話にとどまらない。EU全体で進む暗号資産規制の主導権争い、そして「どの国で免許を取れば欧州全域で営業できるのか」というビジネスモデルそのものに関わる問題でもある。
暗号資産企業にとって、欧州市場はもはや“とりあえず参入できる場所”ではなくなりつつある。
免許を取るのか、撤退するのか。フランス当局は、その決断を6月30日までに迫っている。
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