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Kazuki Okubo
執筆者:Kazuki Okuboスタッフライター
Kazuki Okubo
校閲:Kazuki Okuboスタッフライター

5年ぶり安値に沈む暗号資産カルダノ 創業者が鳴らす警笛とは

5年ぶり安値に沈む暗号資産カルダノ 創業者が鳴らす警笛とは
ニュース

暗号資産市場の寒風が、老舗プロジェクトにも容赦なく吹きつけている。

カルダノの暗号資産「エイダ」が6月3日、5年超ぶりの安値に沈んだ。価格は一時0.20ドル、約32円。2021年につけた過去最高値3.09ドル、約494円から見れば、実に93%超の下落だ。1年前と比べても約70%安い。

かつて「イーサリアム・キラー」とも呼ばれた有力銘柄が、見る影もない水準まで売り込まれている。

ビットコインや主要アルトコインが軒並み下げる中、カルダノの下落は特に目立った。だが本当の問題は、価格だけではない。創業者チャールズ・ホスキンソン氏の言葉が、市場に冷たい現実を突きつけた。

「エコシステム内で失敗の波が起きる」

ホスキンソン氏は、自身のユーチューブでそう警告した。年初から「市場環境が悪すぎるため、多くの人たちが倒れることになる」と述べていたという。今回、その警告が現実になりつつある。

引き金の一つになったのが、カルダノ向け分析ツールを手がけるタップツールズの撤退だ。同社は4年間にわたりカルダノ上でサービスを運営してきたが、事業継続を断念した。理由は単純にして重い。インフラ費用、開発費、人件費、サポート費用がかかる。エコシステム全体にサービスを提供するには金が要る。だが、その経済性が成り立たない。

これは、暗号資産業界のきれいごとを剥がす話だ。

ブロックチェーン業界では、「コミュニティ」「分散化」「理念」という言葉が好まれる。カルダノもその典型だった。学術的で、理想主義的で、慎重に設計されたブロックチェーン。ホスキンソン氏もまた、哲学と技術を語るカリスマ創業者として知られてきた。

だが、理念ではサーバー代は払えない。コミュニティ精神ではエンジニアの給料は出ない。分散化の旗を掲げても、実際にアプリやツールを作る企業には、毎月の固定費がのしかかる。

ホスキンソン氏自身も、苛立ちを隠さなかった。彼は、カルダノ財団のエイダ準備金を使い、分散型アプリのエコシステムを支援する案などを示してきた。しかし、コミュニティ側にはその資金を積極的に使う意欲が乏しいと語った。最近も、年次イベント「カルダノ・サミット」の開催をめぐり、コミュニティ投票で反対が出た

「この事業を次の段階に進めるために、準備金を使おうというコミュニティの意欲はあまり見えない」

ホスキンソン氏の発言からにじむのは、創業者でありながら、もはや一人では動かせない組織へのもどかしさだ。

カルダノは分散型を掲げてきた。だが分散型であるがゆえに、誰が決断し、誰が金を出し、誰が責任を取るのかが曖昧になりやすい。強いリーダーシップを発揮すれば「中央集権」と批判される。かといって、すべてを投票と合意形成に委ねれば、スピードは落ちる。市場が上がっている間はそれでもいい。だが、冬の相場では、その遅さが命取りになる。

ホスキンソン氏は「私にはカルダノに対して特別な力があるわけではない」とも述べた。失敗を自分だけの責任にするのではなく、エコシステム全体で「ビジョンと戦略を持ち、修正すべきだ」と訴えた。

この言葉は、暗号資産業界全体に刺さる。

2020年から2021年にかけて、暗号資産市場には空前の資金が流れ込んだ。あらゆるチェーンが未来を語り、あらゆるトークンが「次のインターネット」を名乗った。分散型取引所、NFT、ゲーミファイ、メタバース。言葉は次々と生まれ、資金調達も続いた。

しかし、相場が冷えれば、問われるのは実需だ。誰が使っているのか。何に金を払うのか。開発者は残るのか。アプリは儲かるのか。チェーンの思想ではなく、経済圏として自立できるかが問われる。

カルダノの苦境は、その縮図だ。技術がある。理念もある。熱心な支持者もいる。それでも、上に乗るアプリやサービスが稼げなければ、エコシステムは痩せていく。ホスキンソン氏は「我々には負ける理由はない。技術があり、哲学もある」と強調した一方で、「善良な人たちを失っている」とも語った。原因は自分ではなく、「経済的現実」だという。

ここが最も痛い。

暗号資産プロジェクトの多くは、価格上昇を前提に成り立ってきた。トークン価格が上がれば、財団の準備金も膨らむ。開発者にも資金が回る。ユーザーも増え、投機家も集まる。だが価格が下がれば、その循環は逆回転する。準備金の価値は減り、開発者は離れ、ユーザーも減る。残るのは、古参コミュニティと値下がりしたトークンだけだ。

エイダの0.20ドル、約32円という価格は、単なるチャート上の数字ではない。カルダノという一大プロジェクトが、理想と現実の狭間で苦しんでいることを示す温度計だ。

もちろん、カルダノが終わったと決めつけるのは早い。暗号資産市場では、何度も「終わった」と言われたプロジェクトが復活してきた。ビットコインもイーサリアムも、過去に深い下落を経験している。カルダノにも技術者、研究者、長年の支持者がいる。再建の余地はある。

だが、必要なのは信仰ではない。資金の使い方、アプリ支援、開発者誘致、ユーザー獲得、現実の事業化だ。ホスキンソン氏が言うように、ビジョンと戦略を持って修正しなければ、さらに多くのプロジェクトが静かに消えていく。

暗号資産バブルの時代には、ホワイトペーパーと壮大な理念だけで金が集まった。いまは違う。市場は、冷酷なまでに収益性と利用実態を見ている。

カルダノの5年ぶり安値は、ひとつの銘柄の下落ではない。暗号資産業界が「夢を語る時代」から「金を稼げる経済圏だけが残る時代」に入ったことを告げる、冷たい号砲だ。---

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