
トランプ大統領の元顧問に利益相反疑惑 自身の会社がテザーから約10億円受領
ステーブルコイン法案を推進していたボー・ハインズ氏が、テザーとの取引で630万ドルを受け取った会社の持ち分を保有していたと米紙が報道。最初の支払いは政権在職中だったという。同氏はその後、テザー米国部門のトップに就いた。

法整備を進める大統領顧問の傍ら、自らが持ち分を保有する会社には、業界大手から資金が流れ込んでいたという。
ドナルド・トランプ米大統領の暗号資産顧問を務め、後にステーブルコイン発行大手テザーへ移ったボー・ハインズ氏に、利益相反の疑惑が浮上した。ホワイトハウス在職中、自らが成立を後押ししたステーブルコイン法案によって利益を得た会社の持ち分を、保有し続けていたと報じられたのだ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が10月14日に報じたところによると、ハインズ氏は共同創業した投資会社Nxumの持ち分の3分の1を保有したまま、米議員らにステーブルコイン規制法案「ジーニアス(GENIUS)法案」の成立を働きかけていた。
その法整備と並行して、Nxumはステーブルコイン「USDT」を発行するテザーとの取引に基づき、630万ドル(約9億9500万円)を受け取っていたという。最初の支払いが行われたのは、ハインズ氏がまだ政府の職にあった時期だった。
反対派を「大統領の足を引っ張っている」と非難するよう要求か
WSJによると、ハインズ氏はトランプ氏の暗号資産顧問を務めていた間も、Nxumの共同経営者らと連絡を取り続けていた。メッセージアプリ「シグナル」を使い、ジーニアス法案の進捗を伝えていたという。
それだけではない。同法案に反対する共和党議員について、「大統領の足を引っ張っている」「コインベースやアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)といった民主党の手先に金で買われている」と非難するよう、共同経営者らに強く求めていたとも報じられている。
ハインズ氏は2025年8月、テザーの「戦略顧問」に就任。その翌月には、同社米国部門の最高経営責任者(CEO)に就いた。
今回報じられた取引は、トランプ氏やその家族、政権スタッフが、自ら立案や成立に関わる法律を通じて私的な利益を得ているのではないかという疑念を、改めて浮き彫りにする。
トランプ氏は、2025年にデジタル資産関連の投資から14億ドル(約2212億円)の収入を得たと開示している。そこには、一族の暗号資産企業ワールド・リバティ・ファイナンシャルからの数百万ドル(数億〜十数億円規模)も含まれる。同社はステーブルコイン「USD1」の発行を手掛けている。
法案成立の式典では、トランプ氏が功績をたたえた
ジーニアス法案は米議会を通過し、2025年7月にトランプ氏の署名で成立した。署名式には、テザーやサークルなどのステーブルコイン発行企業をはじめ、暗号資産業界の幹部が多数出席。ハインズ氏もその場におり、トランプ氏から直々に功績をたたえられた。
ただし、法律の成立だけで制度が動き出すわけではない。米通貨監督庁(OCC)、米連邦預金保険公社(FDIC)、米連邦準備制度理事会(FRB)、米財務省など、ステーブルコインを監督する当局による実施規則の整備が必要となる。同法は2027年1月に施行される予定だ。
コインテレグラフは今回の報道で指摘された疑惑についてテザーにコメントを求めたが、原文記事の公開時点で回答は得られなかった。
政府から暗号資産業界へ、続く「回転ドア」
政府で政策や規制に携わった人物が、暗号資産企業の幹部や顧問に転じる。官民を行き来する、いわゆる「回転ドア」の動きは、ハインズ氏だけにとどまらない。
米商品先物取引委員会(CFTC)の元委員、サマー・マーシンガー氏は、任期を3年残して辞任した。転身先は、暗号資産業界の政策提言団体ブロックチェーン協会のCEOだった。
フィンテック企業ソリダス・ラボも10月14日、元CFTC上級法律顧問のケビン・ウェッブ氏を政策担当バイスプレジデントに迎えると発表した。ウェッブ氏は、元CFTC委員ブライアン・クインテンツ氏の顧問も務めていた。
同社がCFTC出身者を迎えるのは、今回が初めてではない。元委員のドーン・スタンプ氏も、2022年にCFTCを去り、ソリダスの「戦略顧問」に就いている。

