
株は最高値、ビットコインは6週間ぶり安値 “リスク資産の王様”に起きた異変
暗号資産ビットコインが下げ幅を広げている。29日の米国市場序盤に、ビットコインは一時7万2395ドル、円換算で約1153万円まで下落し、約6週間ぶりの安値を付けた。米株式市場が最高値圏で推移する一方、暗号資産市場の出遅れが鮮明となっている。

米国株が沸く一方で、ビットコインは静かに沈んでいた。
29日の米国市場。S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均は、ともに過去最高値を更新した。米国とイランの停戦期待が広がり、投資家は再びリスクを取りに動いた。普通なら、暗号資産にも買いが入ってよさそうな局面である。
ところが、ビットコインは逆に下げた。
一時7万2395ドル。円にすれば約1153万円。6週間ぶりの安値である。
暗号資産市場では、7万2000〜7万4000ドル、円換算で約1147万〜1179万円のゾーンが「最後の防衛線」として意識されている。ここを割り込めば、投資家心理は一気に冷え込む。逆に、この水準で踏みとどまれば、調整の終わりが見えてくる。
市場関係者が注目するのは、米国とイランを巡る地政学リスクだ。
中東情勢が落ち着けば、原油価格は下がる。原油が下がればインフレ懸念が和らぐ。インフレが落ち着けば、米連邦準備理事会、つまりFRBの利下げ期待が高まる。利下げ期待が高まれば、株や暗号資産のようなリスク資産には追い風になる。
理屈はそうだ。
だが、今回は株だけが先に走った。ビットコインはついていけなかった。
このズレが不気味なのである。
ビットコインは長らく、「デジタルゴールド」と呼ばれてきた。インフレに強く、国家に依存せず、金融システムの外側にある資産だと語られてきた。一方で、実際の相場では、米ハイテク株と同じようなリスク資産として扱われる場面も多い。
つまり、危機には金のように買われたい。だが、景気が良い時にはナスダックのように上がりたい。
その都合のいい物語が、足元ではやや揺らいでいる。
株式市場が最高値を更新するなかで、ビットコインは6週間ぶり安値。これは単なる価格調整ではなく、市場の中でビットコインの立ち位置が問われている局面でもある。
オランダの暗号資産アナリスト、ミカエル・ファン・デ・ポッペ氏は、7万2000〜7万4000ドルの水準が極めて重要だとみる。この価格帯を守れれば、調整は終わる可能性がある。だが、崩れれば下値不安が強まる。
反転の合図として意識されるのは、7万7000ドル、円換算で約1227万円だ。この水準を回復できれば、次の上昇局面に入る可能性があるという。
ビットコインの相場は、しばしば物語で動く。
半減期、ETF、機関投資家、国家準備資産、デジタルゴールド。強気派は、常に次の物語を用意してきた。だが、相場が下がるとき、投資家が最初に見るのは物語ではない。チャートの支持線であり、損益であり、逃げ遅れた自分のポジションである。
7万2000ドル台は、単なる数字ではない。
そこは、強気派が「まだ大丈夫」と言い続けられる最後の足場になりつつある。
株は最高値。ビットコインは6週間ぶり安値。
市場は今、暗号資産に問いかけている。
お前は本当にリスク資産の主役なのか。それとも、物語だけが先に走った資産なのか。

