
米政府がビットコイン約400億円分をコインベースへ移動 トランプ氏の「売らない」公約破りで大量売却か
押収したビットコインとイーサリアム、総額約482億円分をコインベース・プライムへ送金。トランプ政権の「ビットコインは売らない」という国家備蓄方針に反するのか、市場がざわついている。

米政府が押収した約3億ドル(約487億円)相当のビットコインとイーサリアムを、機関投資家向け暗号資産サービス「コインベース・プライム」に移動させた。市場ではさっそく、「米政府が大量売却に動くのではないか」との臆測が再燃している。
ブロックチェーン分析企業アーカムのデータによると、米政府関連のウォレットから月曜日、3940BTCと3万14ETHがコインベース・プライムへ送金された。
ビットコインの評価額は2億4395万ドル(約396億円)、イーサリアムは5309万ドル(約86億円)。合計すると2億9704万ドル、約482億円にのぼる。
「ザナックスマン」と破綻取引所から押収したビットコイン
今回動かされた暗号資産は、米政府が過去の犯罪事件などで押収したものだ。
ギャラクシー・リサーチ責任者のアレックス・ソーン氏は、ビットコインの移動について、違法薬物販売に関与したライアン・ファラス、通称「ザナックスマン」と、すでに破綻した暗号資産取引所BTC-eから押収された資産で構成されていると説明した。
一方、イーサリアムは、オラクルの従業員だったブライアン・クルーソンに関連するものとされる。
クルーソンは、5400万ドル(約88億円)規模の暗号資産保管・資金洗浄事件への関与が指摘されていた。
トランプ大統領は「政府のビットコインを売るな」と命じたはず
今回の送金が注目を集めている理由は、ドナルド・トランプ米大統領が掲げる「戦略的ビットコイン準備金」構想との食い違いだ。
トランプ大統領は2025年3月、米政府が犯罪・民事事件の資産没収によって取得したビットコインを、国家の「戦略的ビットコイン準備金」に組み入れる大統領令に署名した。
この大統領令では、準備金に組み入れられた政府保有ビットコインについて、原則として売却せず、米国の準備資産として維持する方針が明記されている。
それだけに、市場では「約396億円分ものビットコインを取引所へ移したということは、売るつもりなのではないか」との疑いが浮上した。
ただし、コインベースへの送金=売却とは限らない
もっとも、コインベース・プライムへ送金されたからといって、直ちに市場で売却されると決まったわけではない。
コインベース・プライムは、機関投資家向けに暗号資産の売買だけでなく、保管、融資、ステーキングなどのサービスを提供している。
したがって今回の移動は、複数の政府ウォレットに分散していた暗号資産をまとめる「資産集約」や、保管体制の変更にすぎない可能性もある。
また、大統領令が売却を禁止しているのは、一定の条件を満たして戦略的ビットコイン準備金に正式に組み入れられたビットコインだ。
犯罪被害者への返還や法執行活動への使用、裁判所命令への対応など、法律上必要な場合には処分できる例外も設けられている。
米政府による今年最大級の暗号資産移動
米政府がコインベース・プライムへ暗号資産を移すのは、今回が初めてではない。
6月には、米政府関連のウォレットから9万8589LINKが同プラットフォームへ移された。この資産は、破綻した暗号資産取引所FTXとアラメダ・リサーチから押収されたものとみられている。
4月には、2016年に発生した暗号資産取引所ビットフィネックスのハッキング事件に関連する約8.2BTCも、コインベース・プライムへ送られた。
ただ、今回の約482億円分という規模は、2026年に入ってから確認された米政府関連ウォレットの移動としては最大級だ。
米政府はまだ3兆3000億円超の暗号資産を保有か
米政府関連のウォレットには、現在も推定206億ドル、約3兆3434億円相当の暗号資産が残されている。
内訳は、およそ32万5000BTC、2万8000ETH、1億4600万USDT、750WBTC(ラップド・ビットコイン)などだ。
「ビットコイン大国」を掲げ、押収したビットコインを国家資産として蓄えるはずのトランプ政権。その一方で、巨額のビットコインを取引所へ移す動きが確認された。
今回の送金が単なる保管先の変更なのか。それとも、数百億円規模の売却に向けた準備なのか。
米政府が次にウォレットを動かした瞬間、暗号資産市場は再び大きく揺さぶられることになりそうだ。

