「弁済売り」再燃か――2カ月ぶりのオンチェーン異変
かつて日本に本拠を置き、世界最大級のビットコイン取引所として名を馳せたマウントゴックスが、また市場をざわつかせている。
すでに破綻した同取引所は火曜日早朝、コールドウォレットから約7億3900万ドル、日本円にして約1180億円相当のビットコインを移動した。オンチェーン分析会社アーカム・インテリジェンスのデータによれば、同社によるオンチェーン上の資金移動は、実に2カ月超ぶりだという。
ブロックチェーンデータによると、マウントゴックスは協定世界時午前4時47分、コールドウォレットから未特定のアドレスへ1万306BTCを送金した。金額にして約7億3080万ドル、日本円で約1167億円に上る。このビットコインは、アーカム上では現在「未使用」と表示されている。つまり、新たなアドレスに置かれたままで、まだ次の送金先には動いていない、という意味だ。
一方で、同時刻には別口で116.3BTC、約825万ドル、日本円で約13億2000万円相当がホットウォレットへ送られている。こちらは「使用済み」と表示されており、すでに別のアドレスへ再移動されたことを示している。
アーカムの画面には、沈黙していた巨額ビットコインが、突如として動き出した痕跡が残る。

Source: Arkham
この大型移動を受け、市場関係者の間では、債権者への弁済が近いのではないかとの観測が広がっている。問題は、その先だ。10年以上も資金の返還を待たされてきた債権者が、ようやくビットコインを受け取った時、売却に動く可能性は十分にある。そうなれば、ビットコイン相場の重荷となりかねない。
なお約3849億円相当のビットコインを保有
アーカムのデータによれば、マウントゴックスは現在も複数のウォレットに合計3万4504BTCを保有している。評価額は約24億1000万ドル、日本円で約3849億円に達する。
マウントゴックスは2024年7月、提携取引所であるクラーケンとビットスタンプを通じ、債権者への返済を開始した。しかし、その歩みは遅い。再生管財人は返済期限を繰り返し延期してきた。
かつてマウントゴックスは、世界のビットコイン取引の約7割を扱う巨大取引所だった。東京を拠点とする同社は2014年、約85万BTCが消失したと報告し、破綻した。その後、約20万BTCが発見されたものの、事件の爪痕はあまりに深かった。
2025年、同取引所の再生管財人は、債権者への弁済完了期限を2026年10月31日に設定した。これは当初の2023年10月期限から数えて、3度目の延長となる。
企業勢の売却も重なり、ビットコインは7万ドル割れ
一方、暗号資産市場全体にも冷たい風が吹いている。
ビットコインは7万ドルを割り込んだ。きっかけの一つとなったのが、ストラテジーによる売却開示だ。同社は優先株の分配金に充てるため、32BTCを約250万ドル、日本円で約4億円で売却した。これは2022年の税務上の損失確定取引以来、同社が報告した初のビットコイン売却となる。
この売却により、ストラテジーの保有量は84万3738BTCから84万3706BTCへ減少した。
さらに、ナスダック上場のプロキャップ・ファイナンシャルも月曜日、純資産価値に対して約50%のディスカウントで200万株を買い戻す資金に充てるため、約52BTCを売却したと発表した。
マウントゴックスの巨額移動、ストラテジーの売却、そしてプロキャップの売却――。それぞれ単独では説明可能な動きでも、市場が敏感になっている局面では、ひとつの不穏な連想を呼ぶ。
「待たされ続けたビットコイン」が、いよいよ市場に出てくるのか。
10年越しの返済劇は、まだ終わっていない。むしろ市場にとっては、ここからが本番なのかもしれない。

