ブロックチェーン決済企業リップルが採用するXRPレジャー(XRPL)は、ゼロ知識(ZK)インフラ企業バウンドレスと提携し、銀行や資産運用会社が機密性を保ちながら規制対応可能な取引をネットワーク上で直接実行できる仕組みを導入する。
バウンドレスの最高経営責任者(CEO)シブ・シャンカル氏は、取引額や頻度、相手先といった詳細を公開せずに保護しつつ、選択的開示やロールベースのアクセス制御により規制当局による監査を可能にする設計だと説明した。
この統合により、従来は完全に透明性のある台帳上では実行が難しかった機関投資家向けユースケースの実現が見込まれる。具体的には、企業間の国際送金、トレジャリーおよび資本管理、店頭取引(OTC)ポジション、トークン化資産の発行、分散型取引所やレンディングなどが含まれる。これらは注文フローやポジション情報の機密性が極めて高い領域だ。
パブリックブロックチェーンにおいて、透明性と機密性のトレードオフは機関投資家の参入障壁となってきた。銀行や資産運用会社は、取引戦略や顧客活動を保護しつつ、規制監督との整合性も維持する必要があるためだ。
今回の動きによりXRPLは、シャンカル氏が「透明性コスト」と呼ぶ完全公開型オンチェーン活動の不利を回避しつつ、銀行レベルのプライバシーを提供する競争において存在感を強める構えだ。
ZKとFHEで広がるプライバシー競争
3月には、暗号技術企業ザマが完全準同型暗号(FHE)スタックを機関向けトークン化プラットフォームT-REXと統合した。ERC-3643準拠の証券(コンプライアンス要件を組み込んだトークン化金融商品)に対する機密性レイヤーとして位置づけている。
他方で、zkSyncの「Prividium」環境のように、ZK証明を用いてイーサリアムに接続しつつ、取引の生データを公開しない設計も登場している。
シャンカル氏は、zkSyncのようなアプローチでは機関投資家が独自のレイヤー2を構築する必要があり、投資や運用負担が大きくなると指摘した。一方、バウンドレスはスマートコントラクトを通じてソリューションを提供するため、「流動性のある場所(イーサリアム)にとどまりつつ、製品展開の柔軟性を高められる」と説明した。
同氏はまた、この設計が従来の金融における選択的開示の仕組みをオンチェーン環境で再現するものであり、機関がプライバシーとコンプライアンスのどちらかを犠牲にする必要がない点を強調した。
プライバシーは基盤機能へ
今回の導入は、プライバシーが単なる付加機能ではなく、基盤レイヤーやトークン化インフラの中核機能へと移行しつつあることを示している。
RWA.xyzのデータによれば、トークン化資産市場は2026年4月時点で292億5000万ドルに達し、1カ月で7.9%増加した。

現実世界資産(RWA)のオンチェーン化や、金融機関によるトークン化ファンドや預金、証券の実験が進む中、ネットワークには機関の機密性と規制監督の両立を求める圧力が一段と高まっている。

