
「ビットコインは絶対売らない」は嘘だった?ストラテジーの方針転換に市場混乱、専門家が警告
ビットコイン大量保有企業ストラテジーが、ついに保有資産の売却へ方針転換した。マイケル・セイラー氏の“意味深投稿”が投資家を惑わせるなか、スタンダードチャータードは「説明不足がビットコイン相場の重荷になっている」と指摘する。

ストラテジーの共同創業者兼会長、マイケル・セイラー氏が日曜日、またしてもSNSに姿を現した。
投資家に向けて発したメッセージは、わずか一言。
「オレンジ色の点は、物語の一部しか語っていない」
添えられていたのは、セイラートラッカー・ドットコムのチャートだった。
これまでセイラー氏は、ビットコイン(BTC)の追加購入を発表する前日に、似たような意味深投稿を繰り返してきた。そのため今回も、市場では「またビットコインを買うのではないか」との期待が広がった。
しかし、いまストラテジーを取り巻く状況は、かつてとは大きく異なる。
同社は長年、「ビットコインは絶対に売らない」という姿勢を貫いてきた。ところが最近になって、優先株STRCの保有者に支払う配当や、現金準備の積み増しに必要であれば、ビットコインを売却する方針へと舵を切ったのだ。
米証券取引委員会(SEC)に提出された7月6日付の書類によると、ストラテジーは今月、2億1600万ドル相当、約350億円分のビットコインを売却した。
これにより、同社のビットコイン保有量は84万3775BTCまで減少した。

“Orange dots tell only part of the story.” Source: Michael Saylor
年利12%の配当を守るため、ビットコインを売る
ストラテジーは売却に先立ち、ビットコインを換金して配当原資に充てられる新たな資本運用の枠組みを発表していた。
同時に、STRC優先株の年間配当率を12%に引き上げ、米ドル建ての現金準備が25億5000万ドル、約4133億円まで増えたことも明らかにしている。
だが、この一連の方針転換をめぐって、投資家には戸惑いが広がっている。
スタンダードチャータードでデジタル資産調査のグローバル責任者を務めるジェフ・ケンドリック氏は、ストラテジーの最近の行動と、セイラー氏の説明方法について、こう警告した。
「短期的には、ビットコインを取り巻く状況を不透明にしている」
ケンドリック氏によると、市場を安心させるには、ストラテジーが新たな戦略を明確に説明する必要があるという。
つまり、保有するビットコインをSTRCの価値を支える裏付け資産として利用する一方で、「大量売却をするつもりはない」と投資家に理解させなければならない。
説明がうまくいけば、STRCの価格が安定し、ストラテジーが実際にビットコインを売却する必要もなくなる可能性がある。
「絶対売らない」では、ビットコインが塩漬けになる
ケンドリック氏は、ストラテジーが長年掲げてきた「ビットコインは絶対に売らない」という方針そのものにも問題があったと指摘する。
「絶対に売らないという姿勢では、MSTRが持つビットコインで何ができるのかが制限される。あるいは、ビットコインが何のために保有されていると市場から見られるのかが、より重要な問題だ」
ストラテジーはここ数カ月で、ビットコインに関する情報発信の方針を変え始めている。
すでにビットコインを2回売却し、さらに保有するビットコインを収益化するプログラムも発表した。
要するに、ビットコインをただ金庫に眠らせるのではなく、配当や資金調達を支える資産として使い始めたということだ。
ケンドリック氏は、こうした市場へのメッセージの出し方は、近く改善される可能性があるとみている。
説明が明確になれば、ビットコインの先行きに対する不安も和らぐという。
スタンダードチャータードは現在も、ビットコインの2026年末価格について、10万ドル、約1621万円との予想を維持している。

Source: Standard Chartered Bank
MSTR株は1年で70%超暴落
もっとも、ストラテジーの物語を信じて株を買った投資家にとって、この1年間は散々だった。
STRC優先株は、1株100ドル、約1万6200円の価格を維持することを想定して設計されていた。
しかし先月、価格はその基準を割り込み、優先株が導入されて以来の最安値まで下落した。
一方、MSTRのティッカーで取引される普通株は、2025年7月以降、価値の70%以上を失っている。
金曜日の終値は1株94.64ドル、約1万5300円。過去52週間の高値だった457.22ドル、約7万4100円から、見る影もなく下落した。
決算でも市場予想を外し続ける
ストラテジーは7月30日、2026年第2四半期決算を発表する予定だ。
ヤフー・ファイナンスのデータによると、アナリストの予想は1株利益4.28ドル、約694円となっている。
ただし同社は、直近8四半期のうち6四半期で、市場予想を下回っている。
2026年第1四半期も、予想を33.76%下回る大幅な下振れとなった。
ビットコインを買い続ける会社から、必要に応じて売る会社へ。
ストラテジーの戦略は確実に変わりつつある。
それにもかかわらず、セイラー氏が「オレンジ色の点」などという謎めいた表現を続ければ、投資家の混乱は深まるばかりだ。
市場がいま求めているのは、意味深な暗号ではない。
「いつ、何のために、どれだけビットコインを売るのか」という、誰にでも分かる説明なのである。

