
ビットコイン急騰も「だまし上げ」か 米CPI急低下で6万4000ドル突破、次は6万ドル暴落の恐れ
米国の6月消費者物価指数が市場予想を下回り、ビットコインは一時6万4000ドル(約1036万円)を突破した。暗号資産市場では空売り勢が次々と焼かれる一方、トレーダーからは「まだ上昇相場とは言えない」と冷ややかな声も出ている。次の焦点は6万4800ドル(約1049万円)。ここを超えられなければ、再び6万ドル(約972万円)まで叩き落とされる可能性があるという。

ビットコイン(BTC)が、久しぶりに“1000万円の大台”へ帰ってきた。
7月14日、米国株式市場の取引開始を前にビットコイン価格は急伸し、一時6万4000ドル(約1036万円)を突破した。
きっかけとなったのは、米国で発表された6月の消費者物価指数(CPI)だ。市場が身構えていたインフレ再燃どころか、結果は予想外の急低下。暗号資産や米国株などのリスク資産に、久々の追い風が吹いた格好だ。
トレーディングビューのデータによると、BTC/ドルは発表を受けて前日比2%超上昇し、直近のレンジ上限へ迫った。
予想3.8%に対して「3.5%」のサプライズ
今回発表された6月のCPIは、前年同月比3.5%だった。

BTC/USD one-hour chart. Source: Cointelegraph/TradingView
市場予想の3.8%を下回っただけでなく、前月比では2020年4月以来となる最大の下落を記録した。米労働統計局の公式データによると、総合CPIは前月比0.4%低下している。
物価を押し下げた最大の立役者は、エネルギー価格だった。
エネルギー指数は6月に5.7%下落。5月には3.9%、4月には3.8%、3月には10.9%も上昇していたが、ここにきて一気に反落した。
米労働統計局は、エネルギー価格の下落が、住居費や食料品価格の上昇を打ち消すほど大きかったと説明している。
米国とイランの軍事衝突や、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡をめぐる不安が続いているにもかかわらず、6月の数字だけを見れば、インフレ圧力は急速に弱まったことになる。
ただし、この物価低下は一時的である可能性もある。停戦崩壊後は原油価格が再び上昇しており、今後のCPIが再加速するとの警戒も消えていない。

US CPI 12-month % change. Source: BLS
株も暗号資産も上昇、利上げ観測は後退
予想を下回るCPIを受け、米国株先物は上昇。暗号資産市場にも買いが広がった。
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策をめぐる市場の見方も、やや“ハト派”方向へ傾いた。
インフレが落ち着けば、FRBが急いで利上げする必要は薄れる。CPI発表後、将来の利上げ確率は大きく低下した。
もっとも、CMEグループの「フェドウォッチ」によると、市場では依然として、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げが行われるとの見方が優勢だった。フェドウォッチは、FF金利先物の価格から政策金利変更の確率を算出する指標だ。

Fed target rate probabilities (screenshot). Source: CME Group
著名エコノミストのモハメド・エラリアン氏は、今回のCPIについて、金融政策をめぐる市場の過度な強硬姿勢を和らげる材料になるとの見方を示した。
要するに、市場はこれまで「FRBがさらに利上げするのではないか」と怯えすぎていた。その恐怖が、今回のCPIで少し薄らいだというわけだ。
空売り勢を襲った「踏み上げ地獄」
ビットコインの急上昇により、価格下落を見込んでいた空売り勢は苦境に立たされた。
暗号資産デリバティブ分析サイト、コイングラスのデータによると、過去24時間に清算された暗号資産のショートポジションは、2億2000万ドル超。日本円にして約356億円に達した。
相場解説者のイグジットポンプは、CPI発表によってショートポジションが踏み上げられたと分析する。
売り手は、強い買い需要に阻まれて価格を下げられなかった。そこへ空売り勢の買い戻しが加わり、ビットコイン価格がじりじりと押し上げられたという。
ただし、同氏は現在の相場について、依然として一定の価格帯を上下する「レンジ相場」にすぎないと指摘している。
つまり、今回の上昇は本格的な強気相場の始まりではなく、単に売り方が耐えきれず逃げ出した結果である可能性もある。

BTC/USD one-day chart. Source: Exitpump/X
「6万4000ドルを超えたから安心」は早すぎる
市場関係者が注目しているのが、6万4000ドル(約1036万円)付近に存在する強い上値抵抗だ。
ビットコインは一度この水準を上回ったものの、明確に突破して定着できるかは分からない。
トレーダーのキラは、直近高値を更新した場合でも、買いの勢いが尽きる「上昇疲れ」の兆候に注意すべきだと警告した。
同氏によると、6万4800ドル(約1049万円)より上には、損切り注文などが集中する流動性の塊が残っている。
一方、現在は週初めの始値付近を試している段階だ。この水準を回復し、その上で価格を維持できなければ、今回の上昇は単なる「切り下がった戻り高値」に終わる可能性がある。
その場合、次に試されるのは6万ドル(約972万円)付近だという。

BTC/USD vs. crypto liquidations (screenshot). Source: CoinGlass
1000万円回復でも、まだ“勝利宣言”はできない
今回のCPIは、ビットコインにとって間違いなく好材料だった。
インフレが鈍化すれば、利上げへの警戒が後退し、株式や暗号資産などのリスク資産には資金が入りやすくなる。
しかし、足元の上昇には、空売り勢の買い戻しによる一時的な押し上げも含まれている。
6万4000ドルを突破したという派手な見出しだけを見て飛びつけば、直後に価格が反落し、6万ドルまで連れ戻される展開もあり得る。
ビットコインは1000万円を取り戻した。
だが、強気相場の扉を開いたのか、それとも再び跳ね返される寸前なのか――。
その答えは、6万4800ドルの壁を越えられるかどうかにかかっている。

