ビットコイン市場に、またしても不穏な空気が漂い始めている。
28日、ビットコイン価格は7万3000ドル、円換算でおよそ1163万円を割り込んだ。節目とされていた7万5000ドル、約1195万円を下回ったことで、市場関係者の間では「短期的な潮目が変わった」との見方が広がっている。
表面上は単なる調整にも見える。だが、オンチェーンデータや取引所の資金流入を見ると、背後では大口投資家による“静かな売り抜け”が進んでいた可能性がある。
コインベースで起きた「異常なディスカウント」
異変は、米大手暗号資産取引所コインベースに表れていた。
暗号資産アナリストのCryptoOnChain氏によれば、ビットコインが7万2500ドル、約1155万円まで下落する前から、現物需要は明らかに弱まっていた。加えて、デリバティブ市場では持続困難なロングポジションが積み上がっていたという。
コインベース・プレミアム指数は、3カ月平均からマイナス1083%も乖離した。これは2025年以降でも屈指のディスカウント水準だ。
プレミアム差はマイナス94.95ドル、約1万5000円まで拡大した。つまり、米国の投資家は海外市場より安い価格でビットコインを売っていたことになる。
この水準は、単なる押し目で見られるものではない。過去には、大口の売却が進む局面で同様の動きが確認されている。

BTC: exchange netflow on Binance. Source: CryptoQuant
売り圧力はバイナンスにも波及
売りはコインベースだけにとどまらなかった。
世界最大級の暗号資産取引所バイナンスでは、ビットコインのネットフローが過去7日平均でプラス1496BTCに達した。これは3カ月平均を528%上回る水準だ。
取引所へのビットコイン流入は、一般に売却準備と受け止められやすい。保有者がコールドウォレットなどから取引所に資産を移す時、その先にあるのは売却であることが多いからだ。
さらに先物市場も過熱していた。バイナンスの資金調達率は、ビットコインが7万5000ドルを割り込む直前、3カ月平均を781%上回っていた。
その後、市場では大規模な清算が発生した。暗号資産全体の清算額は9億3500万ドル、約1489億円に達し、暗号資産市場全体の時価総額は410億ドル、約6兆5300億円吹き飛んだ。
大口ウォレットから64万8000BTCが流出
オンチェーン上でも、見逃せない動きがあった。
100BTCから1万BTCを保有するウォレット群で、流出額は64万8000BTCに達した。これは2月5日、6日以来の高水準だ。当時はそれぞれ100万BTC超、90万5000BTC超の流出が確認されていた。
つまり今回の下落は、個人投資家の狼狽売りだけでは説明しきれない。むしろ、大口保有者の一部が価格下落に先回りする形でポジションを調整していた可能性がある。

BTC outflows across various balances. Source: CryptoQuant
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それでも長期保有者は動いていない
ただし、すべての大口が逃げ出しているわけではない。
今回の調整局面が2025年10月や2026年2月の下落と異なるのは、長期保有者が同じペースでは売っていない点だ。
長期保有者は現在、ビットコイン流通供給量の84.3%を握っている。これは、ビットコインが2025年第3四半期に10万5000〜12万6000ドル、約1673万〜2007万円で推移していた時期と同水準である。
7万5000ドルを割り込んだにもかかわらず、古くからの保有者はなお動いていない。このことは、下落の勢いを一定程度抑える要因となり得る。

BTC long-term holder supply. Source: CryptoQuant
現物市場は急速に冷え込む
一方で、現物市場の熱気は明らかに失われている。
市場アナリストのDarkfost氏によれば、バイナンスのビットコイン現物取引高は、2025年10月の1986億ドル、約31兆6400億円から、足元では364億ドル、約5兆8000億円まで減少した。下落率は実に81%に上る。
2月時点で月間現物取引高は840億ドル、約13兆3800億円前後だったが、その後3カ月でさらに500億ドル、約7兆9600億円減った。
取引高の減少は、市場参加者の関心低下を示す。一方で、実際に売買されるコインの量が減るため、短期的な売り圧力を和らげる面もある。
過去にも似た状況はあった。2023年の弱気相場の終盤、現物取引が細るなかで市場はしばらく沈黙し、その後ボラティリティーとトレンドを取り戻した。

BTC Spot trading volume. Source: CryptoQuant
「投げ売り」はまだ起きていない
もう一つ重要なのが、実現損失の減少だ。
損失を抱えたままビットコインを売却する投資家は減っている。実現損失の30日移動平均は、2月19日の5600万ドル、約89億2000万円から、5月26日には1285万ドル、約20億5000万円まで低下した。
これは、7万5000ドル近辺で市場参加者が一斉に投げ売りしているわけではないことを示している。
足元のビットコイン市場では、短期筋や一部の大口による売りが目立つ一方、長期保有者はなお動かない。市場は冷え込んでいるが、崩壊には至っていない。
いま起きているのは、暴落の始まりなのか。それとも次の上昇に向けた“ふるい落とし”なのか。
その答えは、7万ドル、約1115万円の攻防にかかっている。

BTC daily realized profit loss ratio 30-day average. Source: CryptoQuant
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