今年、仮想通貨業界では取引プラットフォームから分析ツールまで、幅広いプロジェクトで閉鎖の波が広がっている。
4月も例外ではなく、分散型メールサービスのDメールは、高額なインフラコスト、資金調達の失敗、トークンの実用性不足を理由にサービス終了を発表した。
仮想通貨持株会社エコーベースのロシャン・ダリアCEOはコインテレグラフに対し、「過去のサイクルでは、新規トークン発行やベンチャー支援によってプロジェクトの延命が可能だった」と述べた。
しかし現在は「その道がほぼ閉ざされ、損失はより早く認識されるようになり、再建よりも清算に向かうケースが増えている」と指摘した。
仮想通貨はトークンを通じた迅速な資金調達手段を構築した一方で、問題が発生した際にそれを整理・解消する枠組みは未整備のままだ。そのため、状況悪化時に債権債務関係の整理や利害関係者の調整が困難となっている。

ト―クンによる資金調達が機能不全に
ここ数カ月で市場環境が引き締まる中、プロジェクトは過去のような急激な崩壊ではなく、緩やかな衰退へと向かう傾向が強まっている。ユーザー活動の低下、財務基盤の弱体化、資金調達手段の縮小により、時間をかけて価値が毀損している。
ダリア氏は「タリー(Tally)やステップ・ファイナンス(Step Finance)の事例では、単一の失敗要因ではなく、財務価値とユーザー活動の継続的な低下が選択肢を狭めている」と述べた。
DAO向けツールを提供していたタリーは、ガバナンスツール市場が十分に成長していないとして事業終了を決定。一方、ステップ・ファイナンスはハッキング被害後、資金調達や売却を試みたものの実現可能な解決策が見つからず閉鎖に至った。

一部では従来型の破綻パターンも見られる。ブロックフィルズは出金停止後、3月に破産申請を行った。債権者のドミニオン・キャピタルは、同社が顧客資産を流用して損失補填を行っていたと訴えている。
かつてトークンは資金調達や成長支援の手段として機能していたが、現在ではその信頼性は低下している。ダリア氏は次のように述べる。
「従来のサイクルでは、トークンは主要な資金調達手段であり、ユーザー、保有者、運営者の利害は一致していると見なされていた。しかしストレス環境下ではその関係は脆弱であり、とりわけトークン保有者に明確な権利や救済手段がない場合に顕著だ」
一部ではトークンを救済対象の権利として扱う動きも出ている。3月にはアクロス・プロトコルがトークンを株式に転換する買収案を提案した。開発元のリスク・ラボは、トークンとDAO構造が企業や機関投資家との取引を制約していたと説明している。
再建の枠組み欠如が課題に
従来企業と異なり、多くの仮想通貨プロジェクトには再建の明確な手段が存在しない。企業の破産手続きでは、債務の一時停止や債権者との再交渉、資本構成の再編が可能だが、仮想通貨ではこうした仕組みが不十分だ。

多くのプロジェクトは財団、オフショア法人、トークンコミュニティの混在した構造で運営されており、責任や権利を統一的に規定する法的枠組みが存在しない。再建局面においても、トークン保有者は資産やキャッシュフローに対する正式な請求権を持たない場合が多い。
その結果、プロジェクトは不利な条件での資金調達か、明確な優先順位や合意形成の仕組みを欠いたままの清算かという選択を迫られる。ダリア氏は次のように指摘する、
「多くのプロジェクトは正式な再建手段を持たず、トークン保有者、株主、ユーザーといった利害関係者が分断されている。明確な優先順位や強制力のある仕組みがないため、資本再編や価値保全のためのプロセス運営が難しい」
その結果、「流動性が逼迫すると、多くの場合は協調的な再建ではなく、清算やディストレス売却に帰着する」と指摘した。
トークンモデルの限界が露呈
トークンは仮想通貨企業にとって迅速かつ広範な資金調達を可能にしたが、状況悪化時の支えとしては機能しにくい。
ダリア氏は、今回の閉鎖の波は資本供給の縮小と構造的に脆弱なバランスシートによるものだと指摘する。多くのプロジェクトは自社トークンや関連資産に偏った財務構成で弱気市場に突入し、価格下落とともに資金余力が急速に縮小した。
さらに、ベンチャー投資の選別強化、トークン発行の鈍化、流動性の低下により、資金調達や出口戦略の選択肢も狭まっている。
今年に入ってから、多くのプロジェクトは正式な再建を試みることなく静かに終了している。債権整理や利害調整の明確な枠組みがない中で、回復の道筋は依然として限られている。
一方で、一部のプロジェクトは所有構造の統合や制度的枠組みの導入を模索しており、トークンと分散型ガバナンスの限界を受けて市場の一部が適応を始めている兆しも見られる。

