ビットコインが、またしても崩れた。
ビットコイン(BTC)は48時間で9%急落し、2カ月ぶりに6万7000ドル、日本円にして約1072万円の支持線まで下落した。この調整局面で、暗号資産市場全体の時価総額から、わずか2日間で1760億ドル、約28兆1600億円が消えた。過剰なレバレッジをかけていたロング勢には、15億ドル、約2400億円規模の強制清算が襲いかかった。
ただ、市場関係者の間では、なぜ暗号資産だけがここまで弱いのか、いまだに見方は割れている。米国株はむしろ堅調さを見せているからだ。

US Russell 2000 small cap equities index (left) vs. Bitcoin/USD. Source: TradingView
ビットコインと米国小型株の連動は、5月21日に明確に崩れた。それまでの2カ月間は、両者は比較的きれいに歩調を合わせていた。市場心理を悪化させた一因として考えられるのが、5月12日から20日にかけて、米国上場の現物ビットコインETFから21億ドル、約3360億円の資金が純流出したことだ。もっとも、デリバティブ市場のデータは、それ以前から機関投資家の買い意欲の鈍さを示していた。

Bitcoin two-month futures basis rate. Source: Laevitas
BTC先物の年率換算プレミアムは、現物市場に対して3カ月以上にわたり、中立水準とされる4%を下回ったままだ。これは、強気方向にレバレッジをかけようとする需要が弱いことを物語っている。
セイラー率いるストラテジーにも異変
マイケル・セイラー氏率いるストラテジー(MSTR US)にも、ざわめきが広がっている。
同社は、これまで看板のように続けてきた「毎週のビットコイン買い増し」を一時停止する一方、転換社債の買い戻しを選んだ。この動きに対し、Xユーザーのビージュンジョ氏は、ストラテジーが「債権者と株主のためのサバイバルモード」に入ったと指摘した。

Source: X/bjunjo
つまり、ビットコインを積み増すという“唯一神話”をいったん脇に置き、財務上の義務を果たすことを優先し始めた、という見立てである。最近の32BTC売却も、その象徴として受け止められている。アルカの最高投資責任者、ジェフ・ドーマン氏は、この判断を「完全なバランスシート運営の失敗」と切り捨てた。

Source: X/ScroogeCap
一方で、別のXアナリスト、スクルージキャップ氏は、グーグル(GOOG US)が借り入れではなく株式で資金調達に動いたことについて、流動性が枯れるなかで「プライベート・エクイティは事実上死んだ」と分析した。
同氏はさらに、オラクル(ORCL US)の負債資本比率が異例の高さにあると指摘。メタ(META US)についても、「不合理な支出」によって、さらなる資本調達を迫られる可能性があるとみている。
ビアンコ・リサーチのジム・ビアンコ氏は、こう語ったとされる。
「市場がひとつのテーマにここまで集中したのは、過去150年で見たことがない」
JPモルガンの調査でも、AI関連41銘柄だけでS&P500の時価総額の半分を占めているという。暗号資産から資金が逃げ、AI銘柄に吸い寄せられている構図が、いよいよ鮮明になっている。

Interest rate target probabilities for the Sept. FOMC meeting. Source: CME Group
イラン情勢と利上げ観測が重しに
リスク回避ムードを強めたのは、地政学リスクでもある。
イランでの戦争が早期収束する兆しを見せないなか、投資家は一段と慎重になった。その結果、暗号資産市場全体に売りが広がった。
さらに米国債市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月までに利上げに踏み切る確率が23%まで織り込まれている。1カ月前には0%だったことを考えると、市場の見方は大きく変わった。CMEフェドウォッチ・ツールによるものだ。
結局のところ、今回の暗号資産市場の急落は、複数の悪材料が重なった結果といえる。
現物ビットコインETFからの大規模な資金流出。AI投資への極端な資金集中。そして、市場が想定していたよりも長く厳しい金融引き締めが続くかもしれないというマクロ環境。
かつてのように、下がればすぐに押し目買いが入る相場ではない。暗号資産市場は今、弱気派が再び主導権を握るのかどうか、その瀬戸際に立たされている。
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