ビットコイン(BTC)が、わずか10日間で21%もの調整に見舞われた。価格は4カ月ぶりに6万1000ドル、円換算で約976万円の水準を試す展開となった。
きっかけとなったのは、マイケル・セイラー氏率いるストラテジー(MSTR US)の動きだった。同社は一部の社債を買い戻す方針を決め、ビットコインの積み増しを一時停止した。市場ではいま、ストラテジーが保有するビットコインの一部売却に追い込まれるのではないか、との疑念がくすぶっている。

Strategy (MSTR US) Bitcoin reserve changes & average price. Source: Strategy
ストラテジーはこれまで、知られている限り最大級のビットコイン買い手だった。同社は3月以降、12万6016BTCを93億1000万ドル、約1兆4896億円で取得してきた。ところが同社は、最近の株式発行で調達した現金のうち13億8000万ドル、約2208億円を使い、転換社債の一部買い戻しに充てた。
この決定が発表されたのは5月15日。同じタイミングで、同社の優先株「ストレッチ」(STRC US)は100ドル、約1万6000円の水準から離れ始めた。

Strategy Series A Perpetual Stretch preferred stock (STRC US). Source: TradingView
ストレッチ優先株は、価格が100ドルに達するとストラテジーが新株を発行できる仕組みを持つ。保有者には変動配当が支払われ、現在の年率は11.5%。配当は毎月、現金で支払われる。
仮に投資家が「この優先株に100ドルの価値はない」と判断すれば、新たな買い手はより低い価格でしか入ってこない。これは裏を返せば、投資家がより高い配当利回りを要求していることを意味する。表面的には、それだけでストラテジーの信用不安に直結する話ではない。
ストラテジーは2026年の最初の5カ月で、優先株の発行を通じて75億ドル、約1兆2000億円を調達していた。この資金調達は、ビットコイン価格を強く下支えしてきた。
だが、ここからの道のりは険しい。同社の手元資金は9億ドル、約1440億円まで減少している。これは配当支払いの約6カ月分に相当する水準だ。

Strategy (MSTR US) financial highlights. Source: Strategy
市場が注視すべき数字は、ストラテジーの純レバレッジ比率11%である。これは同社の資産に対して、どの程度の負債を抱えているかを示す指標だ。通常の基準で見れば、ビットコイン価格が3万ドル、約480万円まで下落したとしても、保有ビットコインによるカバーはなお保守的な水準といえる。
ストラテジーはビットコイン売却に追い込まれるのか
短期的な流動性環境が悪化していることは確かだ。しかし、ストラテジーの転換社債には、ビットコイン準備金の強制売却を引き起こすような契約上の下限は設定されていない。
さらに、同社が市場調整後の純資産価値を下回る価格でMSTR株を売却することも禁じられていない。
仮に債券市場から資金を調達できない場合、ストラテジーは既存のMSTR株主を希薄化させる選択を取ることもできる。その動きが「弱さ」と受け止められ、MSTRやSTRCの株価をさらに圧迫するかどうかは別問題だ。少なくともレバレッジ比率の観点では、同社はなお財務的に健全な状態にとどまる。

Source: X/zeroxkyle
一方で、市場の不安は消えていない。
ニュースレター「グランド・ライン」の著者で、Xユーザーのゼロエックスカイル氏は、ストラテジーが実際にビットコインを売却すれば、価格下落はさらに加速し、流動性環境は悪化すると指摘している。
その分析が示すのは、いわゆる「破滅ループ」だ。巨大な売り手がいつ市場に現れるかわからない。そうした恐怖がある限り、買い手は新規ポジションを積み増すことをためらう。結果として買いが細り、価格がさらに下がる。価格下落がまた不安を呼ぶ――という悪循環である。
もっとも、何が投資家心理を和らげるのかを予測するのは難しい。現時点でストラテジーが差し迫った強制売却の危機にあるわけではない。優先株の配当は同社の判断で停止できる。ただし、その場合も配当義務は消えるのではなく、後に繰り越されて積み上がっていく。
それでも、STRCが100ドルを下回って取引され続け、現物ビットコインETFが資金流出超過の状態にある限り、ビットコインが7万ドル、約1120万円を上抜けて反発する可能性は限られる。市場はしばらく、セイラー氏の次の一手を固唾をのんで見守ることになりそうだ。
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